「永野クンは、ホントに沖縄が好きそうだね」

これは後でわかったことですが、ヤギ汁というのは、地元の人間として認めるかどうかを判別する「踏み絵」のような意味合いがあるようで、沖縄に家やクルマを持っていることよりも、ヤギ汁を「美味いです!」と猛スピードで食べまくったことが、仲間に入れてもらえるきっかけになったようです。

僕がヤギ汁をおかわりする様子を見て、嬉しそうに笑っていた年配の地主さんから、「すごいね、キミ。ホントは沖縄の人なんじゃないの?」と言われて、「これだけヤギ汁が好きで、沖縄が好きということは、先祖はたぶん沖縄だと思います」と答えると、地元の地主さんたちが喜んでくれて、すっかり打ち解けることができました。

この宴会の途中で、ある地主さんから、こんな話を持ちかけられました。

「永野クンは、ホントに沖縄が好きそうだから、珍しい土地があるんだけど、興味があるなら譲ってもいいよ」

僕は初めて存在を知ったのですが、地主さんがいう珍しい土地とは、「軍用地」のことだったのです。

国が借り手となるため、安定的な収入が見込める

沖縄の人であれば誰でも知っているようですが、沖縄県外の人で「軍用地」の存在をご存知の方は、それほど多くないと思います。

軍用地とは、米軍基地や自衛隊施設が使用している土地のことを指します。

日本には、沖縄の他にも、長崎・佐世保海軍基地や、山口・岩国海兵隊基地、神奈川・横須賀海軍基地など、各地に軍用地がありますが、その大半が元々は日本軍が使用していた国有地だったのに対して、沖縄にある米軍専用施設群の土地の多くは、国が個人所有の土地を借り上げて、米軍に提供しているものです。

国は土地の所有者(地主)に対して、毎年「借地料」を支払っており、その総額は年間900億円に達しているといいます。

借地料は、毎年、国の防衛施設局と沖縄県軍用地主連合会との話し合いによって決定され、借地単価に応じて支払われますが、その金額は毎年1%くらいのペースで膨らみ続けているのが現実だそうです。

僕に話を持ちかけてくれた地主さんは、自宅を建て替えることになり、急にお金が必要になったため、「軍用地を現金で買う気はないか?」と問いかけてきたのです。

軍用地というものが民間レベルで売買できることにビックリしましたが、詳しく話を聞いてみると、いろいろと興味深い案件であることがわかってきました。

普天間飛行場
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