情報過多の時代を上手に生き抜く 

飛行機は自力で飛ぶことができるが、グライダーは自力で飛ぶことができない。人間の能力もこの2つに分けることができる。受動的に知識を得る「グライダー能力」と、自分で物事を発明・発見する「飛行機能力」だ。知識を詰め込むグライダー能力だけが優秀でも、所詮コンピュータには負けてしまう。AIの誕生によって人間の仕事が奪われようとしている今だからこそ、考えることの本質に迫り、独自の思考を生む術を教えてくれるのが本書だ。

外山 滋比古『思考の整理学』(ちくま文庫)
外山 滋比古『思考の整理学』(ちくま文庫)

物事を考えるのには、最初にテーマの設定が必要だ。文学の研究ならば、まず作品を読む。読んでいくと、わからないところ、違和感を抱くところなどが出てくる。これを書き抜く。繰り返し心打たれるところや、わからない箇所が再三現れたら要注意。こうした部分が「素材」になる。ただ、素材だけでは足りない。アイデア、ヒントがほしい。それらはビール醸造でいうところの「醱酵素」になる。そして「麦」に当たる先の素材と一緒に“寝かせる”ことで、化学反応が進行し、「おいしいビール=面白いテーマ」が生まれる。