新ICチップ技術に注目が集まる

現在、世界のAI関連半導体市場で“CXL(Compute Express Link)”と呼ばれる、新しいICチップ技術に注目が集まっている。CXLとは、基本的に、コンピューター内の重要な部品同士を高速で結ぶ技術だ。今後、AI分野の発展のため、画像処理半導体(GPU)と広帯域幅メモリー(HBM)に加え不可欠な分野になるとみられる。

現在、CXL関連の研究開発・実用化で、業界をリードしているのは韓国サムスン電子のようだ。CXLは、幾種類かの半導体や演算装置を柔軟に結合し、データを超高速・低遅延で転送することを可能にする。それは、AIのトレーニング、量子計算などに必要だ。

今後のCXLの活用で、複数の半導体を結合し必要な機能を実現する、“チップレット生産方式”の重要性も高まるだろう。それに備え、世界最大の半導体受託製造企業である台湾積体電路製造(TSMC)は“後工程”ビジネスを重視し始めたという。

カラフルに光るCPU
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AIの課題である「大量の電力消費」を解決できる

CXL関連技術の向上は、わが国の半導体部材、製造装置メーカーの収益機会の増加につながるだろう。国内でも、“光半導体”とCXL技術を結合しAI分野で成長を目指す企業が出始めた。国内の関連企業がAI、半導体分野の世界的な競争激化に対応し、必要な設備投資を積み増すことが、中長期的なわが国経済の成長に大きな影響を与えるだろう。

現在、世界のAIトレーニングを行う、データセンター向け先端チップは一部企業の独り勝ち状態だ。演算分野では、米エヌビディアが設計開発するGPUが世界の92%程度のシェアを持つ。GPUの生産は、TSMCが3ナノメートル(ナノは10億分の1)を最先端の製造ラインで行っている。一方、AI向けのメモリー分野では、韓国SKハイニックスのHBMが70%程度のシェアを獲得している。

急速に需要が拡大したGPUだが、電力消費量が大きいという課題もある。脱炭素の意識の高まりの中で、関連企業はデータセンターの電力消費を抑制する必要がある。その課題解決の一つとして、“CXL”が急速に注目を集め始めた。