技術の進歩で内視鏡検査もバリエーション豊かに

大腸の内視鏡検査では、一般的に肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体の画像を見ながら詳しく腸内の状態を調べていきます。実は大腸がんのほとんどが、最初はポリープだったものが徐々に大きくなって大腸がんに移行していくタイプ。

内視鏡検査中にポリープが見つかった場合は、ほとんどの場合そのまま切除できるので、早期発見という意味でも、内視鏡検査はぜひ受けてもらいたいのです。

内視鏡検査は下剤を飲まなければならなかったり、肛門からカメラを入れること自体への抵抗などがあったりして敬遠する人も多いようですが、最近では研究が進み、検査のバリエーションも増えています。

便潜血は胃がんの可能性もあるため胃カメラと同時に検査をすることもよくあります。最新の方法としては、まず麻酔をかけて胃カメラを入れ、同時に下剤を投与。

胃カメラが終わって目が覚めたときには下剤が効いてくるのでトイレに行き、腸がキレイになったら続けて大腸の内視鏡検査を行うという、胃と大腸の検査を1日で終わらせる医療機関も出てきています。

また、内視鏡を使わない検査として、カプセル型のカメラを飲み、体内を通過しながら画像撮影をしたカメラを、最後は排便から回収する方法や、大腸にガスを入れて膨張させCTで撮影するという手法もあります。

このような技術面の進歩もあるので、自分に合った検査をしてくれる医療機関を探し、定期的に検査を受けてみてください。

検査や検診もたくさん受ければいいわけではない

明確に予防できる因子はわかっていませんが、大腸がん発症のリスク因子はわかっています。喫煙、肥満、運動不足、不健康な食生活(野菜不足、加工肉の食べ過ぎ、ビールの飲み過ぎ)などが、大腸がん発症との関係が強いことが知られています。

石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)
石井洋介『便を見る力』(イースト・プレス)

大腸がんに限らず体に悪いとされるものが並んでいますね。つまり「大腸がんを予防するにはこれ!」という決め手はなく、健康的な生活を送るというつまらない答えになります。大腸がん死を防ぐには、早期発見が大切です。

早期発見が大事なら毎日便潜血検査をしたり、全国民に無償で検査できるキットのようなものを配布したりすればいいのでは? と考えられる方もいると思いますが、それは間違った考え方です。

毎日検査をすれば、確かに大腸がんを早期発見できるかもしれないのですが、それ以上に偽陽性といって、大腸がんではないのに陽性反応が出てしまうことが増え、無駄に精密検査を受けたり不安になったりする可能性が増えてしまいます。

そういうデータを統計的にすり合わせて、今のところ我が国では40歳以上は年に1回、アメリカでは50歳〜75歳の方は年に1回検診を受けることが推奨されています。

新型コロナウイルス感染症のときにも同じような話がありました、とりあえず全員にコロナ検査をすると一定数無症状の感染症患者さんが出てくるのですが、これが早期発見のこともあれば、実は感染していない人を捕まえているだけのこともあるため、全員調べるスタイルは現代の検査キットの性能の限界といわれていました。

検査や検診もたくさん受ければいいかと言われると、そういうわけでもないので、適切なタイミングで適切な検査を受けることが重要です。

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