タワマンは低地に位置している場合が多い

今後、あの2019年の台風19号と同等かそれ以上に強力な台風がやってこないと考える理由はない。むしろ、さらにパワフルな台風に襲われることを想定すべきだろう。

特にタワマンの場合、そのアキレス腱は電気系統とエレベーター、そしてトイレだ。

タワマンの多くは、わりあい低地に位置している場合が多い。湾岸の埋め立て地や大きな河川の近くなどは、倉庫や工場の跡地などまとまった土地が出やすい傾向にある。そういった土地がタワマンとして開発されるのだ。

逆に、比較的標高の高い山の手はお屋敷町から高級住宅地へと移り変わったケースが多く、タワマンにふさわしい事業用地は出にくい。さらに、山の手エリアは建築規制上もタワマンを建てにくい場合が多い。

低地に立地するということは、水害に遭いやすい、ということでもある。

水害とは、台風などによる大雨か、地震による津波である。

タワマンが強風によって大きな被害を受けるとは考えにくい。バルコニーに置いたものが吹き飛ばされたりはする。タワマンのバルコニーに植木鉢を置くなどはかなり危険。吹き飛ばされて他の住戸の窓に当たれば、まずいことになるかもしれない。

強風によって敷地内の造作物や樹木などが破損する被害は考えられる。ただし、せいぜいその程度。やはり、問題は水害である。

地面に打ち付ける激しい雨
写真=iStock.com/VisualCommunications
※写真はイメージです

エントランスホールの冠水にも要注意

台風の場合は、河川の氾濫がもっとも要注意。どのエリアに河川氾濫の被害が及ぶかは自治体が公開しているハザードマップなどで確認できる。

ただ、武蔵小杉であったような内水氾濫は、あの被害が起こるまでは想定しづらかった。あのケースも「想定外」であったのではなかろうか。

つまり、河川にあまり近くなくても内水氾濫の被害に遭う可能性は高い。ましてや低地に立地するケースが多いタワマンにとって、内水氾濫は要注意だ。

武蔵小杉のタワマンの場合は、地下4階から浸水した。しかし、内水氾濫は地上の道路などから数十センチ、あるいは1メートル程度を冠水させることもある。

そうなった場合、タワマンの弱点は電気室、エレベーターとなる。電気室が2階以上に設置されていれば、ひとまず安心。

ただし、1階のエントランスホールが冠水した場合はちょっとまずい。エレベーター内にも水が入る可能性が高まるからだ。冠水したエレベーターを動かすのは危険。それを再び動かすには、水が引いた後で専門の技術者による安全確認が必要だ。この場合、数日間はエレベーターが使えなくなることもあり得る。