ケルン駅で定刻に着いた列車は4本に1本

2023年9月にミュンヘン交響楽団は、ケルンからベルリンへ向かう予定だったが、列車が約4時間半遅れた(通常5時間~5時間半で着くが、この時には約10時間かかった)。

このためコンサートは予定よりも15分遅れて、始まった。予定されていたコンサートのラジオ中継は、中止された。交響楽団の関係者はX(旧ツイッター)で怒りをぶちまけていたが、DBからは何の賠償も受けられなかった。

この国では列車が定刻よりも6分以上遅れて到着した場合を遅延と見なす。DBの統計によると、2023年12月に定刻に目的地に着いた列車の比率は、58.6%にすぎなかった。つまり長距離列車に乗ると、ほぼ2回に1回は定刻に着かない。

最も遅延がひどいのはケルン西駅で、2022年の統計によると、定刻に着いた長距離列車の比率は24.6%にすぎなかった。ヨーロッパで最も遅れが少ないのはスイス連邦鉄道で、長距離列車の96%が定刻に到着する。スイス連邦鉄道を優等生とすると、DBは落第生だ。

遅れが深刻化している原因は線路やポイントなどの老朽化や、人手不足だ。ドイツ人に「日本の新幹線では、到着が予定時刻より2分遅れても、謝罪の放送がある」と言うと、びっくりする。

運転士の労働組合が求めた4つの条件

これに加えて、ドイツの列車運転士らが賃上げや労働条件の改善を求めて時折行うストライキも、乗客たちを悩ませる。

2023年12月7日、ドイツ列車運転士労働組合(GDL)は2日間の警告ストに踏み切り、全国で長距離・近距離列車を停止させた。列車の発車時刻を表示する駅の電光掲示板には「キャンセル」の文字が並んだ。ストの理由は、2024年の賃金と労働条件をめぐるDBとの交渉が暗礁に乗り上げたからだ。GDLはDBに対し次の改善措置を要求した。

① 全労働者の月給を555ユーロ(9万4350円)引き上げる。
② シフトで働く労働者の所定労働時間を週38時間から35時間に減らす。ただし給料は減らさない。
③ インフレ対策手当として年間3000ユーロ(51万円)の上乗せ(実習生の場合1500ユーロ)。
④ 企業年金の改善など。

焦点となったのが、給料を減らさずに、シフト労働者の所定労働時間を週38時間から35時間に減らすという要求だ。これは事実上、週休3日制の導入を意味する。