昔は録画したビデオでチェックしていたが…

吉沢は、中学まで親がスマホを持たせない教育方針で育ったため、テレビから情報を得たが、スケートボードのほかスポーツクライミング男子ボルダー&リードで銀メダルを掴んだ安楽宙斗(17)など10代選手の躍進と、動画技術の発達は無関係ではないだろう。

小学生からスマホを持つ選手も多く、タブレット型端末などで動画を撮影後に共有してもらえば、即座に自身のフォームを確認できる。平成初期に活躍した元プロ野球選手は「今の環境がうらやましいです」と正直に話す。

「僕らが現役の頃は動画技術も発達しておらず、自分の感覚を信じてやるしかありませんでした。試合でのフォームなども、帰宅後に録画していたビデオを見ながらチェックしていましたが、今ではほぼリアルタイムで確認しながら、微調整することができます。小さい頃からそんな環境で育っていれば、僕ももう少しいい結果が出ていたでしょうね(笑)」

2010年代からは投球や打球の詳細なデータが取得できる最新精密機器「ラプソード」や「トラックマン」が野球、ソフトボール、ゴルフ界で広く普及すると、個々の技術は飛躍的に進歩した。

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高校球児の球速も“異次元”に突入している

ゴルフの松山英樹も2014年の米ツアー本格参戦後に導入し、ラウンド直前の練習でデータをチェックすることで、その日の気候や状態などによって変わるボールの初速や飛距離、スピン量などを把握。2021年にアジア勢初のマスターズ制覇、そしてパリ五輪では日本男子ゴルフ初の銅メダル獲得につなげた。

野球においては、投手の球速アップに多大なる貢献を果たしたといっても過言ではない。以前であれば、一流投手の基準として140キロが一つの目安とされたが、今では、中学生が計測することも少なくない。大谷翔平投手(ロサンゼルス・ドジャース)は花巻東(岩手)時代、高校生史上初の160キロに到達。佐々木朗希投手(千葉ロッテマリーンズ)は大船渡(岩手)時代に163キロを叩き出すなど、考えられない次元へと突入した。

ラプソードやトラックマンの導入は、投球の計測において、球速はもちろん、ボールの回転数や回転軸、変化量などの詳細なものまで、幅広いデータをリアルタイムで習得することを可能とした。感覚と実際のフォームのギャップを知ることができる上、それまでは球の「伸び」や「切れ」といった漠然としたものが、「ホップ成分」や「変化量」として数値化され、自身の目指すべき目標が明確になったことが、数々の好投手を生んだ一因となっている。