痛風発作そのものよりも合併症が恐ろしい
痛風発作そのものには生命の危険を心配する必要はありませんが、痛風による合併症にはいくつか注意が必要なものがあります。生活習慣病の原因は痛風の原因とも重なり、尿酸値の高値は生活習慣病の進行ともリンクします。そのため、尿酸値が基準値を超えた状態を無治療で放置すると、痛風だけでなく、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病を合併しやすいことが知られています。
生活習慣病は動脈硬化を招き、腎障害、脳・心血管障害へとつながる恐れがあります。例えば、尿酸値が高いと慢性腎臓病の末期にあたる末期腎不全(ESRD)の発症率も高くなるという報告があります。高尿酸血症の多い男性を対象にした調査ですが、1000人当たりのESRD発症数は尿酸値が7.0mg/dL未満だと1.22人に過ぎません。しかし、尿酸値が7.0mg/dL以上の高尿酸血症になると、その発症数は4.64人にまで増加します。[Iseki K et al.“ Significance of hyperuricemia as a risk factor for developing ESRD in a screened cohort” Am J Kidney Dis 44(4): 642–650, 2004]命に関わるさまざまな疾患につながる可能性があることを、しっかりとご理解いただきたいと思います。
治療と生活習慣でコントロールが可能な疾患
痛風の原因は関節内に溜まった尿酸塩結晶です。血液中の尿酸値が低下しても、すぐに尿酸塩結晶がなくなるわけではありません。尿酸値を正常値の6.0mg/dL以下と良好にコントロールしても、尿酸塩結晶が消失するには3年近くの時間が必要と言われています。また治療薬によって血液中の尿酸濃度が急激に下がると沈着していた尿酸塩結晶が一気に溶け始め、痛風発作が起こったり、治療薬を急にやめることで発作がひどくなったりすることがあります。痛風発作自体は1〜2週間程度で痛みが治りますが、自己判断で治療をやめないようにしてください。医師の指示に従って、生活習慣の改善や尿酸値を下げる薬による治療に継続して取り組みましょう。
痛風は遺伝的な影響も大きいため、根本的治療が難しいこともありますが、適切な治療と生活習慣の改善によって、コントロール可能な疾患です。食事をする時、お酒のおかわりを頼む時、日常生活の中で健康を意識した選択を積み重ねて、健康的な毎日をサポートしましょう。