出稼ぎ売春する女性が出現するほど貧乏になった

政府も利上げ1%で、国債は9年強で順次借り換えていくため1年目で0.8兆円の負担増、2年目には2兆円、3年目には3.2兆円の利払費が増えていく。9年後には8.7兆円増となり、いまの防衛予算をかるく超えてしまう。これがインフレターゲットである2%上昇となると、負担増もほぼ2倍となるから考えるだけで恐ろしい。

金利を上げることは、すなわち日銀も政府も大きな負担を抱える構造になっている。だから、マイナス金利政策解除と言っても、この先はそうそう大胆なことができない。例えば、インフレ率が3%、4%へと徐々に上がっていったとき、それに対応して金利を3%も4%も上げられるのか。容易なことではない。

三番目は、円安である。ある国の政府が莫大な量の通貨を長期間発行し続ければ、その国の通貨の価値は下がる。当たり前のことだ。日本政府が二十数年も金融緩和をやってきた結果、日本の円の価値は相対的に下がり、海外から見れば、「日本はいつのまにか貧乏になっている」(海外在住の日本人投資家)と指摘されてしまう時代となった。

それが証左に、海外で出稼ぎ売春する日本女性が出現したではないか。いい加減、この現実に目を向けるべきではないか。

「歳出カット」「財政再建」しか選択肢が見当たらない

第四には、為替介入という打ち出の小槌にも限界があることだ。政府・日銀が持つ外貨建て資産(外貨準備高)は、円換算で195兆円もあると官邸から聞かされたことがある。今回も、1ドル160円で(覆面で)為替介入を行って一気に8円も円高にもっていった。たいした豪腕である。外貨準備高を2日間で8兆円使った。

鈴木洋嗣『文藝春秋と政権構想』(講談社)
鈴木洋嗣『文藝春秋と政権構想』(講談社)

しかし、為替介入とは、所詮はカンフル、あるいは緊急輸血のようなものであって、根本的な治療法ではないだろう。日本経済が加速度的に生産性を向上させ、適度な経済成長によって物価高→賃上げという景気の好循環にならなければ、円の価値が戻ってこないのは自明のことだ。この先、日銀が金利を上昇させるたびに円安や資源高に対応して、この緊急輸血を続けていくことができるのか。外貨準備の4分3以上が米国債であることも忘れてはならない。

「前向きな経済政策」をいの一番に掲げることができないのは残念至極であるが、ともかくこの日本国の財政状況では、悩ましいことに、まずは「歳出カット」「財政再建」しか選択肢が見当たらないのである。

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