脳は「イヤなこと」ほど記憶している

ではそもそも、心の状態というのは、自分の力でコントロールできるものなのでしょうか。

答えは「できる」です。

そして、そのカギを握るのが、「言葉・動作(態度)・表情」の3つの要素です。

私たちが普段何気なく発している言葉や動作・表情は、無意識のうちに目や耳がキャッチし、脳に届けられ、心の状態に影響を与えます。

たとえば、イヤなことが起きたり、思いどおりにならないことがあったりすると、無意識のうちに「だめだ!」「なんでだよ!」などとマイナスの言葉をつい口にしてしまう、ふてくされた態度や浮かない表情が出てしまうことがあると思います。このような言動や表情は、そのまま自分の目や耳から脳に伝わり、心の状態に悪影響をおよぼします。その結果、心の振り子がマイナス方向に振れて、パフォーマンスを発揮しにくい状態になってしまうのです。

音の波形と耳
写真=iStock.com/Jun
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それでは、なぜマイナスの言葉・動作・表情が、心の状態に悪影響を与えてしまうのでしょうか。それは以下のような仕組みです。

私たちの脳には、過去の経験・体験を、そのときの感情とセットで無意識のうちに記憶するという特徴があります。「失敗した」体験と、「恥ずかしかった」「イヤな思いをした」という感情がセットになって、記憶データとして脳の中に蓄積されていくのです。そして、マイナスの言葉を口にすると、「あのしんどかったときについ発してしまった言葉だ」という脳の記憶データに結びついてしまい、そのときの状況や感情が鮮明に呼び起こされてしまいます。そのため、マイナスの感情にさいなまれてしまうというわけです。

それからもう一つ、脳には「プラスよりマイナスのことを優先的に記憶する」という特徴もあります。そもそも人間はネガティブになりやすい傾向があります。

「私ってどうしても物事をマイナスに考えてしまう癖がある」と嘆く人がいますが、人間である以上それは当たり前のこと。私たちは、誰もが普通にマイナス思考になってしまうような脳を持ち合わせているのです。