爆発的な追い風の陰で進行する「新政府計画」とは

この判断をもって「法の上に人を作らず」の民主政治は失われた。トランプ氏が当選した暁には、アメリカは民主主義から独裁体制に移行するのではないかと警戒する声は強まるばかりだ。

この免責特権が認められたために、残っている3つの刑事裁判が選挙前に行われる可能性はゼロとなった。起訴内容が公式な仕事か、非公式のものかの判断が改めて必要になったからだ。もしトランプ氏が当選した場合は、とり下げられる可能性もある。トランプ氏にとってまさに爆発的な追い風が吹いている。

ドナルド・トランプ支持者が笑顔でプラカードを見せている
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この状況を、NY Future Labの若いメンバーはどう見ているのか。民主党バイデン氏と共和党トランプ氏の支持率は世論調査で激しく拮抗しているが、若者の7割は民主党支持だ。

ミクアは「バイデン氏でも、誰か他の人になっても、私は民主党に入れる」という。これにはラボメンバーのほぼ全員が同意した。トランプ氏を勝たせないためにはこの選択しかないと考えているからだ。

彼らがこれほどの危機感を抱く理由は、アメリカで議論を呼んでいる「プロジェクト2025」という計画の存在を知ったためだという。トランプ氏を強く推す極右のシンクタンク「ヘリテージ・ファンデーション」が作成した900ページもの行動計画書で、彼らはこれをアメリカ第2の革命と呼んでいる。

バイデン氏の口を封じることにも成功した

その内容は衝撃的だ。

・自身の支持者を国家公務員の官僚(5万人)として任用し、大統領の手足のように動かす。
・気候危機対策の規制を大幅に緩和し、化石燃料産業へのテコ入れを行う。
・女性やLGBTQ等の人種的マイノリティに対する施策を大幅に縮小する
・不法移民を強制送還する
・大企業や富裕層に対し、大胆な減税策を行う等

実はこれらはすべて、トランプ氏がこれまで支持者に訴えていた内容だ。それを氏に擦り寄るシンクタンクが実効的な政策として詳細に記している。アメリカ社会を50年~100年前に逆戻りさせるだけでなく、世界への影響も計り知れない。

いまアメリカではトランプ氏もバイデン氏も嫌がり、投票の棄権を表明する若者が多くいる。投票率が下がれば激戦州の勝敗に影響し、トランプ氏が大統領に返り咲く可能性が強まるが、もしそうなればこのように恐ろしい政策が実行されるかもしれないのだ。

バイデン大統領はこの計画書を批判していたが、トランプ氏が銃撃された今となってはそれも難しくなっている。というのも、暗殺未遂事件が発生したタイミングはまさにこの「プロジェクト2025」がグーグル検索を賑わせ、テイラー・スウィフトの検索数を超えたというニュースまで出てきた直後のことだった。

事件を受け、トランプ氏の副大統領候補に指名されたヴァンス上院議員は「狙撃が起きたのは、プロジェクト2025を批判し、トランプ氏を独裁者やファシストと呼んだバイデン大統領の責任だ」とXで非難した。こうなると言った者勝ちで、バイデン氏もしばらく過激な批判はできなくなるだろう。