犠牲者ゼロで作戦を遂行
ロシア軍による波状攻撃を防ぐうえで、「死の鎌」は特に効果的だという。ダ・ヴィンチ・ウルフ大隊の兵士は、「敵は最終的に陣地を占領しましたが、そこにはウクライナ兵の死者はいませんでした」と述べている。
ウクライナの防衛技術クラスター「Brave1」のナタリア・クシュネルスカ最高執行責任者(COO)は、「第一に、人間の関与を最小限に抑えることが重要なのです」と、戦闘の一部をロボットに担わせる意義を強調した。
ロボットの用途は多岐にわたる。英テレグラフ紙はこのほか、ウクライナの特殊作戦部隊は、前線から人員や損傷した車両を撤退させるためにもロボット車両を使用していると報じている。
Сheck new robotics gorund platform made by Ukrainian developers from @BRAVE1ua. In 2023 within Brave1 defense tech cluster 137 developments received $2,3 mln funding. More advanced tech for the frontline in progress. pic.twitter.com/vQXwxeKVPh
— Mykhailo Fedorov (@FedorovMykhailo) January 5, 2024
空飛ぶドローンから地上ドローンへの変遷
これまで注目された飛行型ドローン兵器(UAV)に加え、今後は地上走行型ドローン兵器(UGV)が戦場でより多く見られるようになるとの観測が濃厚だ。
米フォーブス誌は、ウクライナ政府がUGVの量産を支援しており、複数の企業や組織が戦場でテストを行っていると報じている。その一例として、ウクライナ政府による公式資金調達機構「United24」は、戦闘、兵站、地雷敷設、地雷除去の役割を担うUGVの量産計画を発表した。ウクライナの「Brave1」クラスターもUGVの開発とテストを支援しており、14種類のUGVが実戦で使用されている。
一方、ロシアもUGVを導入している。英エコノミスト誌は、有志によって製造された「クーリエ」などのUGVが戦場で使用されていると報じる。ロシアはUGVを攻撃や後方支援に使用しており、UGVが橋を攻撃したり、負傷者を搬送したりする映像が公開されている。
ただし、UGVの導入には課題もある。エコノミスト誌は、地上での走行は飛行よりも難しく、自動運転技術の開発は特に遅れていると指摘する。空中のドローンは比較的簡単に自動飛行できるが、地上では経路上の障害物や地面の凹凸を認識して回避することが難しい。とくにUGVとの通信が遮断された場合、迷子になったり立ち往生したりするリスクが高まる。
自爆用ロボットは15万円…兵士の命を守り、しかも安価
それでも今後、UGVの導入は増えるだろう。ロボット兵器を使用する利点のひとつに、生存率の向上がある。ロボット兵器は安全な場所から敵陣をねらうため、自軍の兵士の生存率を高める。
第2の利点は、コストの安さだ。ウクライナでは、多くのロボット兵器が市販の部品を使って低コストで製造されている。例えば、カモフラージュ塗装のリモートコントロールカーに爆薬を取り付けた「Ratel S」と呼ばれる自爆型ロボット兵器は、わずか900ドル(約15万円)で製造できる。静音性の電動モーターで駆動し、最大3マイル(約4.8km)の範囲を走行。最大35キロの爆薬を積むことが可能だ。