順風満帆でなかったエステーのCM

「会社辞めずに済んでよかったですな。もしも何かあったら、あなたに辞めてもらわなくてはいけなかった。ハッハッハ」

そう言って高らかに笑う、エステー鈴木喬社長(当時)に「ありがとうございました」と頭を下げたのは2011年4月のことです。

震災直後、ポルトガル在住のミゲル少年や西川貴教さんが「消臭力」のテーマソングを歌った消臭力CMは多くのお客様に支持していただきました。

2011年8月には日本で最も好感度の高いテレビCM(CM総合研究所が選出)に選ばれ、複数の広告賞を受賞する栄誉にも恵まれました。

でも、このCMが生まれた道のりは決して順風満帆なものではありませんでした。

イメージが浮かんだのは東日本大震災から5日目の早朝

ラ~ラ~ララ~♪

子供たちが歌っている。その背景には震災から復興した街並みが映っている。そんなイメージが脳裏に浮かんだのは2011年3月15日。東日本大震災から5日目の早朝のことです。

東日本大震災で被害にあった街並み
写真=iStock.com/enase
イメージが浮かんだのは東日本大震災から5日目の早朝(※写真はイメージです)

震災直後、民放各社は早々に報道特別番組に切り替え、テレビCMなしで番組が組まれていました。しかし、どのような緊急時でも、原則として放送開始から48時間後にはテレビCMが入る通常の放送体制に戻ります。

このとき、広告主は予定通りにCMを流すのか、ACジャパンが制作する「公共広告」に差し替えるのかという決断を迫られます。