SNSで広がる「手作り目薬」にはどんなリスクがあるのか。眼科医の平松類さんは「塩の入った番茶で目を洗ったり、点眼したりするのは絶対にやめたほうがいい。雑菌が目から全身に回り、最悪の場合、命を落としてしまうことさえある」という――。
目薬をさす人の目元
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塩番茶、はちみつ、バター…なぜ自作目薬にハマる人が続出するのか

X(旧Twitter)を中心とした様々なSNSでは、時折、手作りの目薬がバズっています。例えば「塩」や「番茶」を原料にした目薬を自作して点眼するというもので、驚くことに多くの人に拡散されています。

実際に使った人からは「目がかゆいときにすっきりする」「炎症が抑えられる」などという声があがっています。自作目薬以外にも、目の中にはちみつやバターを入れたりなどの民間療法が話題にあがることがあります。

「そんなバカな」と思うかもしれませんが、定期的にこのような投稿がされ、多くの人の目に留まっているのです。ではなぜ人は自作目薬を作ってしまうのか? はたまた、自作目薬はなぜいけないのかについてご紹介しようと思います。

まずなぜ自作の目薬を使う人がいるのか? どういう心境なのか? もちろんそれは人にもよりますが、多くの人は「化学物質に対する恐れ」を抱いているために「処方された目薬」はもちろん「市販された目薬」も怖いと思っているようです。

実際に外来に来られる患者さんの中にも「化学物質は使いたくない」といって投薬を拒否される方もいます。特にもともと体が弱かった方やアレルギー体質の方の場合は、化学物質でこれまで痛い思いをしてきたので、このように思ってしまう傾向があります。

一方で自作の目薬というのは使った原材料が目に見えているわけです。例えば塩番茶の目薬であれば、塩と番茶と水なので、安心と考えてしまうようです。これは食品に置き換えると、「よくわからないお弁当だと添加物が心配」だから「自炊する」というのに発想が近いようです。

SNSは「都合のよい情報」ばかり流れてくる

確かに自炊のお食事はいいものです。しかし、目薬はあくまで薬なので実際は「自作の薬剤を作る」に近いイメージを持ってもらった方がいいです。

そして直ちに問題が起きにくいという事があります。後述するように自作目薬には多くのリスクがあります。しかしそのリスクはかならず顕在化するものではありません。

例えば、海で塩水が目に入っても直ちに問題が生じないのと似ています。使えば必ず問題が生じるわけではなく、一定の確率です。しかし、継続して使ったり、取り扱いを誤ったりすることによっては、大きなトラブルを生んでしまうものなのです。

また、このような投稿を見たときは、SNSの特性も考えなければなりません。SNSが登場する前は、同じような考えの人が集まる場というのは今より限られていました。

しかし、現在は簡単につながることができます。自分と価値観が似た人たちどうしがフォローしあうことで、「作られた目薬は怖い」「自作の目薬の方が安心」と同じような考えばかりを目にしやすくなります。

しだいに、自分に都合が良い情報ばかりが沢山でてきます。すると「多くの人が自作目薬をしている。これは安全だし効果があるだろう」と勘違いしてしまうという現象がおきるわけです。エコーチェンバーといわれます。

普段は共感を得られない情報のはずが、どんどん拡散されるわけです。SNSの場合は自分の好みではない、見たくないものは表示されにくい傾向があることに注意が必要です。