「雑菌」は至るところにあふれている
そして容器と保存の問題もあります。通常目薬をさすときは、ボトルを押して中の水をだします。そしてその後に自動的に空気が入るというつくりになっています。構造上、圧をかけないとボトルの中から外、外から中へと液体が移動しにくいのです。
ぜひ、目薬の蓋を取って逆さにしてみてください。確かに漏れはするけれどもドバドバ全部出てしまうという事はないはずです。こうやって外にある雑菌を入れないようにしているのです。
「雑菌なんてうちにはない」という人がいますが、雑菌は世の中にあふれています。自作の目薬でこのような構造の目薬容器を作るのは困難です。となると、外気など、外の菌を容易に取り込みやすい構造のものを使う事になってしまうのです。
このようにお話しすると「それでも私は自作目薬で○○が治った!」という方がいます。まず、本当にそれはその目薬の効果だったのか? というのを考える必要があります。
プラセボ効果と言って、仮に何であっても「この目薬は効く」と思って使うと効果が多少は出るという事がわかっています。ですから、その自作目薬を使わなくても同じような信じる気持ちを持っていれば、市販薬でも同等の効果があったかもしれません。
「バズる目薬」のリスクはあまりにも高い
1人だけが治ったという場合は「たまたま」という可能性が否定できません。例えば処方薬として承認される場合は、このような検証が何度か行われます。
同じような状態の人(ドライアイや目の不調)で「Aの目薬」と「Aの目薬ではない偽物」を作ります。医者側も本物か偽物かをわかっていません。もちろん目薬を渡される患者さん側もわかりません。
そしてしばらく使い続けて、その後に偽物と本物を使った人でどのぐらい差が出たか? というのを見るのです。こうしてやっと「この目薬には効果がある!」と言えるのです。
例えば風邪をひいて熱がでている際に、2~3日してレモン水を飲んだら熱が下がることがあるかもしれません。ただ、たまたま熱が下がるタイミングだっただけという事もあるので、多くの人を無作為に分けて検証する必要があるのです。
こういうことをしないで「自作目薬はいい!」と発信する人がいるわけです。一方には、そのような投稿をすることで多くの人に見てもらえるため、承認欲求を満たしたり、はたまたそこから他のビジネス(例えばサプリや、教材の販売)をするという業者さんもいます。
ではお金儲け目的の人ばかりかというと、そうでもありません。こういう科学的な考察なく「私がよくなったのだから他の人にも勧めたい」という悪意のない無邪気な気持ちで、根拠のない治療を勧めてしまう方がいます。
あくまでも善意であり、「何が悪いの?」と思われるかもしれません。しかし、もしあなたのススメで自作目薬を使い、その人に感染症が起きてしまったらどうなるか、というのを考えてほしいのです。
一般に認証されている医療行為でさえリスクがあります。自作目薬の場合は、リスクがあることが明確です。何やら効き目のありそうな手作りの目薬がバズっているのを見た際は、「効果については科学的検証はなし」という現状を理解した上で、行動していただければと思います。