黒船襲来、「不動産ファンドビジネス」始まる
新しい職場では、毎日が刺激的だった。投資家から「出資」という形でまずお金を預かって、銀行からも「融資」を受け、不動産を購入する。そしてその不動産の面倒を見ながら必死に不動産の価値を高める。これが資産運用(不動産アセットマネジメント)という仕事である。
例えば、一等地に100億円でビルを買い運用したいという投資家がいたら、必死に物件を探す。ビルが見つかると次にそれを買った後にどう価値を高めるかを考える。1階が目立たない居酒屋だったら、スターバックスのようなもっと高い賃料を払えるお洒落なカフェにする。1階が繁盛店になるとビルに活気が戻り2階以上のオフィスの賃料も上がる。このようにしてビルが“稼ぐ力”を底上げし、キャッシュフローを増やしていく。
米国の投資家の「水先案内人」としての仕事
その一方で、できるだけ出費を減らしていく。管理会社の管理費が高ければ入札をかけ、サービスのレベルを下げることなく安く請け負える管理会社と入れ替える。その結果、手元のキャッシュが増え、このビルはより一層、“儲かる不動産”に生まれ変わる。
こうした仕事を通じて資産運用会社(不動産アセットマネジメント会社、不動産アセットマネジャーともいう)は「4つの報酬」を得る。まず、買った時にもらう取得報酬。次に、買ったビルを管理・運用することに対する報酬。3つ目は、何年か後に価値が上がり売却した時の処分報酬。さらに、計画よりも高く売れた場合の成功報酬。これらを手にできる。
つまり、儲かる不動産を探しだして仕立て直し、売却し利益を得る。これで成果を出せれば、運用した側はそれなりの報酬を要求し、投資した側もそれに応じる。これが当時、日本にはまだなかった米国流の不動産投資の考え方だった。
こうして、日本の不動産市場参入を狙う米国の投資家の水先案内人としての仕事が始まった。