所得400万円の国保料は70万円から60万円に減らせる

青色申告のメリットを税理士の服部修氏(服部会計事務所代表)に聞いた。

「ひとつは、個人事業主は最大で65万円までの青色申告特別控除を受けられること。記載方法や申告方法によって65万円、55万円、10万円と適用できる金額が変わりますが、白色申告では青色申告のような特別控除はありません」

国保料の基準となる課税所得を出す際、所得から差し引かれる控除は「基礎控除のみ」で、扶養控除や生命保険料控除、医療費控除などは差し引くことができない。しかし青色申告の場合は、青色申告特別控除も差し引くことができるのだ。

例えば売上から経費を引いた所得が400万円だったとして、基礎控除(43万円)を引くと357万円。この場合、東京都のある区における年間国保料は40歳以上単身世帯で約【70万円】だ(高い!)。しかし同条件で青色申告特別申告を満額適用して65万円を控除すると約【60万円】と、【10万円】も減額になる(それでも高いが)。もちろん国保料だけでなく、所得税も、住民税も安くなる。

※筆者註:所得による「国保料」は自治体により差があるため、保険料は住まいによって変わる。

「また青色申告では事業が赤字になった場合、その損失を翌3年間にわたって繰越を行うことが可能です(「純損失の繰越控除」)。ところが白色申告ではできません。さらにもう一つ、青色申告では事業を手伝う家族や親族への給与を経費にできます(「青色事業専従者特別控除」)。白色申告でもできるのですが、配偶者が年85万円、そのほかの親族は50万円といった上限があります。青色申告では常識を越えるような範囲でなければ、自由に設定することができるのです。ただし事前に届出手続きが必要です」(服部氏)

「なぜ有利な青色申告を選ばないのか」と疑われる

それでは「税務調査」についてはどうだろうか。白色申告者には税務調査が入らないという説である。服部氏はこのような見方をする。

「もし私が国税局にいて税務調査を担当しているならば、白色申告の人を見た時に『なぜ青色申告を選ばないのか』と考えるでしょうね。前述したように青色申告にはさまざまな特典があるのです。特別控除があり、損失を翌年以降に繰越でき、親族に対しての給与も経費に認められる。けれどもそれらを選ばない。もちろん事前に税務署に青色申告承認申請書を提出しないといけませんから、そういった手続きを知らなかったという人はいるかもしれません。しかし、そうでなければ、なぜ本来申告者にとって有利なはずの青色申告を選ばないのか。そういった疑問から税務調査が入る可能性もありますし、悪質な税逃れがされていると判断された場合は7年前までさかのぼって調査されることもあります」

また青色申告では書類(帳簿)がきちんとしていることが前提のため、申告した時点で「自動承認」である。しかし白色申告の場合は、ざっくりとした作成でもOKのため、平たく言うと目をつけられる可能性が高いだろう。公にはされていないが、国税局には推計課税の資料があるはずだ。業種ごと、また売上や取引先などの状況による、概算の所得である。そこから毎年、大幅に逸脱するような申告をしていれば誰がみてもあやしい。