「脱植民地化」の流れに逆行するMV
3人組ロックバンド「Mrs. GREEN APPLE(ミセス・グリーン・アップル)」の新曲「コロンブス」のミュージックビデオ(MV)が、植民地主義や人種差別を想起させると批判され、公開中止になった。日本発エンタメ・コンテンツが続々と世界へと発信されるなか、この騒動は「島国だから」では済まされない大きな感覚のズレを示している。
日本の最新の楽曲は近年、アニメ作品への楽曲提供などから、海外でもほぼリアルタイムで親しまれるようになっている。「鬼滅の刃」など数々のアニメ主題歌を手掛けたLiSAは、ここブラジルのNetflixでもコンサートとドキュメンタリーのコンテンツが視聴できる。
その他、アニメ作品と関係なく宇多田ヒカル、藤井風、星野源といったアーティストのコンサートも配信されており、海外でもJ-POPがより身近になっている。
そんななかでのミセスの新曲「コロンブス」のMVが「差別的だ」として炎上した。ヨーロッパの偉人が“優れた文化”を類人猿に授けるというストーリーだったからだ。
多くのメディアはコロンブスによる“新大陸発見”後に展開された植民地主義の観点からMV制作における歴史認識の欠如を批判しているが、それ以上に本作が危うく感じられるのは、現代社会が取り組むアファーマティブ・アクション(積極的差別是正措置)、脱植民地化に対する問題意識と表現のベクトルが真逆であるためだ。