トップバリュ製品の売上を増やせれば郊外部に大量出店できる

自信を深めつつある、まいばすはさらに畳みかけようとしている。横浜市の郊外で、トップバリュ製品の構成を約5割とした実験店をオープンし、その成果を確かめようとしている。これが何を意味するかと言えば、NBよりも利益率の高いPBトップバリュの売上を増やせば、さらに粗利率を高くすることができる=損益分岐点をさらに下げることができる、ということになる。損益分岐点を下げる⇒より少ない売上でも成立する⇒もっと郊外部にも大量出店できる、ということである。この実験に成功すれば、まいばすは一気に首都圏郊外にも拡大していくことが可能になるのである。

こうした状況を踏まえ、まいばすは出店エリアの拡大を進めつつある。まいばすの店舗物件募集HPをみると、これまでの出店エリアの増強は言うまでもなく、隣接する地域に加えて、国道16号線の内側に関してはどんどん出店していこうとしていることが見て取れる(図表5)。今、売上2500億円を超えたまいばすではあるが、このあたりまで拡大していくとなれば、売上5000~6000億円までは成長することが見通せる。これは現在の有力スーパー、ヤオコーやオーケーに匹敵する規模であり、イオンは首都圏において、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH・売上7000億円クラス)と併せて、圧倒的な存在感を確立することになる。まいばすの貢献度はますます重要になることは間違いないだろう。

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交通弱者にとって便利なスーパー「まいばす」

まいばすは前期で決算13期目なのだが、なぜこの短期間に、ここまでの基盤を築くことができたのだろうか。それは首都圏の居住環境、交通事情が背景となっている。23区を中心とする首都圏人口密集地はご存知の通り、世界有数の公共交通網が整備されている。生活者は電車、バスを軸として、自転車、徒歩で暮らせるため、ほかの地域と違いクルマに頼らずに生活できる。そのため、首都圏中心部においては、元々、生活者の買物行動範囲は小さいのだが、近時、若者のクルマ離れ、高齢化の進行によって、さらに近場で買物する傾向が高まっている。

これに対して、現在、首都圏で展開する大手スーパー(ライフ、サミット、オーケー、郊外ではヤオコー、ベルク、マミーマート、ベイシアなどを指す)は広い駐車場付きの大型の店舗(売場面積1500~2000m2くらい)を展開して、比較的広範囲から集客するビジネスモデルとなっている。そのため、都心部では出店適地が少なく、店舗がまばらで、クルマを持たない都心住民には行きにくい。まいばすはコンビニくらいの密度で出店しているため、こっちの方がはるかに行きやすいのだ。まいばすは、交通弱者にとって、とても便利なスーパーなのである。