70歳まで働き続ければ3000万円アップ

①健康意識が高いAさん〜70歳まで元気に働いて生涯賃金3000万円アップ

会社員のAさんは、若手の頃から健康意識が高く、定期的な運動としっかりとした睡眠、栄養バランスを考えた食事を摂り続け、60歳になっても働き盛りのころと変わらない健康状態を保っていました。健康診断の結果も特段の所見はなく、本人も働き続けたい意思を持っていました。

そこで勤務先から、概ね60代前半は週5日勤務、60代後半は週3~4日の勤務、平均年収は300万円とし、70歳まで雇用の延長可、との条件提示を受けたとします。

仮にこの条件で10年間働いたら、生涯賃金は3000万円アップしますので、「老後2000万円問題」はクリアすることができたと言えます。条件次第では社会保険にも継続して加入できます。

オフィスで笑顔で挨拶するシニア男性
写真=iStock.com/Edwin Tan
※写真はイメージです
②健康状態が悪化しているBさん〜健康を害すと年収100万円弱にとどまる

若いころから健康維持に無頓着な会社員・Bさんがいたとします。暴飲暴食、仕事が忙しい時は徹夜もザラ。ヘビースモーカーをイメージしてみてください。

60歳時点でのBさんの健康状態は、月に何度も通院や治療が必要で、気力と体力の状況からも週3日程度の勤務であれば可能、という状況だったとします。安定した勤怠面で懸念が残るBさんに、60歳以降もこれまで通りの条件で働いてもらうことには、会社側も躊躇せざるを得ないでしょう。

そこでBさんには週2~3日で計16時間勤務、時給1300円という勤務条件が提示されました。この場合、年収は約100万円弱です。

健康意識で「2000万円の差」ができる

仮に10年間この条件で働き続けたとしたら約1000万円ですので、Aさんとは2000万円もの生涯賃金の差が生じることになります。Bさんは勤務時間が少ないため、社会保険の加入も困難です。

いかがでしょうか。「身体が資本」と言われるように、そもそも生涯賃金を増やすためには、心身ともに健康であることが大前提です。

マネーリテラシーを高めて老後の資金を懸命に貯めることも大事ですが、60代以降も、具体的には健康寿命の少し前までは、稼ぐことができる心身状態を保つことも、お金と同じように大切であることを、このモデルケースから感じていただければ幸いです。

では、70歳になってもいきいき働くには、これからどのようなことに気をつければよいのでしょうか。50歳からでもできるヘルスリテラシーの高め方について最後に解説します。