「老後のお金」に関しては関心が高いが…

2019年6月に、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループの報告書「高齢社会における資産形成・管理」が公表され、老後に2000万円が必要だと報じられたことにより「2000万円」という数字が一気に話題に上りました。近年の物価高を考慮すると、不足額は2000万円どころか4000万円ほどになるという報道もあります

2024年から新NISA制度が導入されたことから、書店のビジネス書コーナーにも資産形成についての本がたくさん並んでおり、マネーリテラシーへの注目は集まっていると感じます。

一方で健康についてはどうでしょうか。マネーリテラシーと比較して、健康に対するリテラシーである「ヘルスリテラシー」についてはまだまだその重要性が認識されていない、と私は感じています。

元気に働き続けるためには、まずは生命に重大な影響を及ぼす病気の代表格、がんにならないことが大切です。厚生労働省「人口動態統計(確定数)」(2022年)によると、死亡の原因で最も多いのは「がん」(24.6%)で、およそ4人に1人が「がん」で亡くなっています。

がんに関しては、概ね50代半ばまでは女性患者(子宮頸がん・子宮がん・乳がんなど女性特有のがんが中心)が多く、その後急速に男性のがん罹患ケースが増えることが知られています。

健康でないと週5日・フルタイムでは働けない

健康診断をはじめとした早期発見や治療方法の進歩により、がんの生存率は多くの部位で上昇傾向にあります。したがって、仮にがん罹患が判明したとしても、すぐに命に関わるようなケースは昔に比べると減ってきたのが事実です。

しかし、仮に初期の治療が奏功したとしても、その後の定期通院の必要性や生活習慣の見直し、それに再発に怯えつつの暮らしでは、従来通りに週5日・フルタイムで働くことが難しくなることも多々あります。

また、下記でも詳述しますが肥満も「万病のもと」です。肥満になると高血圧や糖尿病、心臓の病気にかかる可能性が高くなります。もし糖尿病が悪化して人工透析が必要になってしまった場合、こちらも週5日・フルタイムという働き方は難しくなるでしょう。

では、「健康かそうでないか」の違いが、生涯年収にどのように影響するのでしょうか。モデルケースをもとに試算してみました。