「ヘルスリテラシー」=「情報リテラシー」

まず、ヘルスリテラシーとはどういったスキルを指すのでしょうか。私は次の3つのことができる状態であると考えます。

① 適切な医学情報・健康情報にアクセスすること
② その情報を正しく解釈し理解して、自ら行動変容すること
③ それを他者とのコミュニケーションに活かすことができること

さらに噛み砕いてご説明すると、私が代表を務める株式会社フェアワークで提供している従業員サーベイには、次のような質問があります。

・新聞、本、テレビ、インターネットなど、いろいろな情報源から情報を集められる
・たくさんの情報の中から、自分の求める情報を選び出せる
・情報がどの程度信頼できるかを判断できる

この質問の意図としては、自分で情報を検索し、取捨選択し、信頼性や妥当性を吟味できる能力を測定しています。「①正しい医学情報にアクセスすること」、得られた医学情報を「②正しく解釈し理解すること」ができるのかどうか、を問うているのです。

例えば皆さんが、資産配分を見直すためにマネーリテラシーを高めようと考えた場合、まずは新聞や本やインターネットから情報を集め、吟味してから、実際の行動に移す、という順序になるでしょう。ヘルスリテラシーの高め方もこれと同じです。

さらに、インプットした情報を「③ コミュニケーションに活かす」つまりアウトプットができてこそ、「ヘルスリテラシーの高い人」となります。ぜひ、正しい情報を自分の言葉で、まずはご家族や同僚に伝えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

「万病のもと」肥満をどう治すか

最後に、本コラムのテーマである「長く健康に働くこと」の基本対策として、肥満についてもお伝えします。

肥満は心臓病や脳卒中のリスクとなるだけでなく、近年ではがんや認知症との関連も指摘されていますが、治療といえば長らく運動療法と食事療法が中心でした。しかしここ1~2年ほど、糖尿病治療薬の肥満治療薬としての効果が話題になっています。巨大製薬メーカーが肥満治療薬の開発にしのぎを削り、株価も大きく上昇している事実をご存じの方も多いのではないでしょうか。

メタボリックなウエストの接写
写真=iStock.com/AkiraIto
※写真はイメージです

国内では、大正製薬が4月8日、医師の処方箋なしで薬局で購入できる一般用医薬品(OTC)として、内臓脂肪を減らす市販薬「アライ」を発売しました。産業医としては「万病のもとである以上、肥満は治療の対象になりうる」との認識をもっと多くの方に持っていただきたいと思っておりますし、これら治療薬の、日本での発売のニュースはそういった意識転換を促すものではないかと期待しています。