相手との信頼関係を構築できる人は何をしているか。エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんは「ある業績好調のベンチャー企業の社長さんは、朝6時に起きると真っ先にメールチェックし午前2時、3時まで会社に残って仕事をしていた部下の日報に返信する。日報だから特に返事を書く必要はないが、きっと返事をもらった社員は『ああ、がんばってよかった』と思うだろう。向こうが投げたボールに対して、そのボールをすぐに返す、というのは相手に対するアクノレッジメントとなる」という――。

※本稿は、鈴木義幸『「承認(アクノレッジ)」が人を動かす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

メールを確認するビジネスマン
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朝6時起床で部下の日報に真っ先に返答

人を動かすことがうまい人は、とにかくありとあらゆる機会をアクノレッジメント(相手の存在を認める行為)のために使っているようです。そういう人にとっては、サイバー空間すらアクノレッジメントの格好の場となります。

私がコーチングしているベンチャー企業の社長さんの話です。この会社は店頭公開を果たした会社で、ここ数年で社員は20人から5倍近い100人に増えました。現在も業績は好調です。

この社長さんのもとには毎日1000通を超えるメールが来ます。1000通です! これらのメールは自動でソートされ、すぐに読む必要があるメール、後回しにして良いメール等に分けられます。それでもすぐにリターンする必要があるメールは200通近くあるそうです。

彼は朝6時に起きるとまずメールをチェックします。いちばん先にチェックするのが、午前2時、3時まで会社に残って仕事をしていた部下が送った日報だそうです。そしてその日報にはすぐに返事を書きます。

想像してみてください。明け方までへとへとになって働いて家に帰り、わずかな睡眠を取って会社に出てみると、そこには明け方自分が書いた日報への返信がすでに届いているのです。

しかも社長から。そこから感じ取るメッセージが「お疲れ」なのか「体壊すなよ」なのかはわかりませんが、きっとその社員は「ああ、がんばってよかった」と思うでしょう。日報ですから特に返事を書く必要はないのです。そのままにしておいても何の問題もありません。

でも彼はそうしません。うまくいっている会社は、何気なくうまくいっているわけではないんだなと強く思いました。