選手や社員の能力を引き出す指導者は何をしているか。エグゼクティブコーチの鈴木義幸さんは「少年野球ではどなったり、叱ったりする根性型の指導が横行している。しかし、これでは子どもは受け身になり監督が指導したこと以外は決してやらなくなる。良い監督は子供が空振りしても『いいぞ、あたると思ったらどんどん振っていいぞ!』と『アクノレッジメント』を用いて子供の意見を大事に扱い、改善に向けて働きかけている」という――。

※本稿は、鈴木義幸『「承認(アクノレッジ)」が人を動かす』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

バットを振る子供
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根性型指導の限界

私の知人で清水さんという方がいます。彼の人生は、とにかくここまで野球、野球、野球。野球一色でした。

早稲田実業で甲子園に3回行き、早稲田大学で野球部の主将を務め、社会人では熊谷組の野球部に入り、最終的には監督としてチームを全国大会準優勝に導きました。現在は、日本オリンピック委員会の強化スタッフ(野球)なども務めています。

この清水さんが、日本の野球界における指導者のコーチングについて実状を私に教えてくれました。彼は力を込めて言います。「野球界のコーチングはひどい! 特に少年野球はひどい! 時代錯誤もはなはだしい!」。

もちろん全部が全部ではないでしょうが、彼に言わせると、少年野球では何と言っても相手の存在を認める行為、言葉である「アクノレッジメント」が極端に少ないそうです。

例えば、バッターボックスに入った子どもが、高めのボール球に手を出して空振りしたとします。そうすると監督がどなるそうです。

「何でそんな高い球に手を出すんだ! ボールを見てるのか!」

その子どもが次に取る行動はどうなるでしょうか。とにかく怒られたくないから、次のボールには絶対手を出さないぞと決めるでしょう。で、そうしたときに限ってド真ん中のボールが来ます。子どもは当然振らずに見送ります。そうすると監督はまた怒ります。

「このばかやろー! 真ん中の球に手を出さないやつがどこにいる‼」

子どもは混乱し始めます。どう振っても怒られる、振らなくても怒られる、どうしよう。混乱のさなか、つい何となく三球目のボールに手を出して三振します。結局、監督はまた怒るのです。

「三球三振してどうすんだ‼」