人間には4つの側面があり、図5のように肉体、知性、情緒、そして精神から成り立っている。私たちはこれを「全人格」と呼ぶ。

この4つの側面は、あらゆる人の基本的なニーズとモチベーションに結びつく。すなわち、肉体=生きること(生存)、知性=学ぶこと(成長と発展)、情緒=愛すること(人間関係)、そして精神=貢献すること(存在意義)である。

メンバーを本当にモチベートしたければ、このような全人格的な観点から個人を把握し、それぞれのニーズを満たしていかなくてはならない。

例えば「彼は計算が得意だから在庫管理を任せよう」と考えるのでは、目に見える能力だけで捉えているにすぎない。彼がもし顧客に直接貢献することやチームで成果を出すことに喜びを見出すのなら、その仕事には自発的に取り組めないだろう。メンバーが取る行動の最上段にある「クリエーティブに躍動する」はとても期待できない。

メンバーの自発的な態度は「意義」「情熱」「尊重」の動機レベルから引き出される。何に意義を感じるか、何に情熱的になれるか、どんなときに尊重されていると感じるかは、メンバーのボイスと密接なつながりがある。したがってリーダーは、メンバーにボイスを見出すよう奮起させ、またそれを把握しておく必要がある。本当のニーズは各人のボイスに表れるからだ。

そして、個人のニーズと組織の方向性を結びつける。つまり、個人のボイスと組織のボイスを関連づけることがリーダーの大きな仕事となる。これについては、ビジョンに関する項で詳述する。

さて、全人格型パラダイムに基づいて、リーダーの役割も4つに整理することができる。すなわち、「信頼を呼び起こす」(精神)、「意義を見出す」(知性)、「システムを創造する」(肉体)、「力を解き放つ」(情緒)である(図6)。

次回からは、それぞれの役割について詳しく説明する。

(構成=伊田欣司)
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