歴史をひもとけば、日経平均株価のPBRは0.81倍(加重平均)を下回ったことがありません。リーマンショックで0.81倍、コロナショックで0.82倍、東日本大震災で0.9倍です。

株式投資を続けているとたまに遭遇する、2、3年に1回程度訪れる暴落があります。その際はPBR1倍程度で下げ止まり、その後は上昇に転じています。

つまり、絶望的な暴落が発生した時に想定される真の底値はPBR0.8倍と見通しを立てることができるのです。

株価の大幅な下落が断続的に発生すると、SNS等では「リーマンショック」というキーワードをよく目にするようになり、不安に思われる投資初心者の方も多いでしょう。ですが、以下のことを理解していれば、過度に恐れる必要はありません。

大きな暴落が発生するためには、事前に株価が暴騰している必要があります。サブプライム危機とリーマンショックが発生する前の日経平均PBRは2倍を上回っていました。

つまり、事前に株価が高くなりすぎていたがために60%を超える大暴落となったのです。

株式市場の価格下落
写真=iStock.com/Tomasz Śmigla
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底値が分かれば心理的な負担は軽くなる

その一方で、コロナショック発生前の日経平均PBRは1.1倍を少し上回った程度でした。リーマンショックはPBR2倍強からPBR0.81倍までの下落、コロナショックはPBR1.1倍強からPBR0.82倍までの下落です。

コロナショックでは、もともとの株価が高くなかったため、リーマンショックのような60%を超える下落とはならなかったという考え方もできるでしょう。

株価下落局面でも、日経平均PBRがどの程度かを知っておけば、いたずらに恐れる必要はありません。

人は見通せない未来に恐怖します。概ねの底値が分かれば心理的な負荷は全く違ったものとなり、また、PBR0.8倍という底値を前提として事前に対策を講じることもできるのです。

暴落時に底値を見積もれることは、株式市場から退場させられずに生き残る確率を上げてくれるにとどまりません。

他の投資家が恐怖で株式を手放している時に、それを安値で買い集めることもできるのです。

「PBR1倍」が一つの判断基準になる

また、多くの暴落がPBR1倍で下げ止まっていることを勘案すると、PBR1倍程度となったら大きく買っていくという戦術もとれます。

ただし、PBRが1倍程度となるのは数年に1度ですので、その時のみをピンポイントで狙って買うというのは現実的には難しいと思います。

普段からポジションをとって相場観を養いながら、暴落時にはいつもより多めに買っていくという方が現実的でしょう。