7位 最後は「気合」と「根性」で乗り越える

野球劇画『巨人の星』にて、父・星一徹は我が子・飛雄馬に“ど根性”を叩き込み、幼少時より、地獄の苦しみが伴うトレーニング機器「大リーグボール養成ギプス」の着用を、恐ろしい顔で強制した。

昭和世代でも、今の時代なら一徹が不適切な“毒親”だと理解できるだろう。

ご存じ、メジャーリーガーの大谷翔平は合理的なトレーニングや食事、十分な休息時間の確保を重視し、『巨人の星』的な根性や気合とは無縁のアスリートの印象がある。だが、その大谷は、23年に開催されたWBC準決勝のメキシコ戦で、9回裏に2塁打を放ったあと、2塁ベース上で感情を爆発させ、チームメイトを鼓舞した。その後、不調だった村上宗隆がサヨナラ打を放ち、日本は劇的逆転勝利を収めた。

合理性は大事だが、最後の最後で「気合だ!」と高揚し、「根性だ!」と粘ることはまったく無意味でもない。アドレナリンの分泌とも関係し、いわゆる“火事場の馬鹿力”の存在も科学的に証明されている。

8位 子どもが近所で自由に遊べる場をつくる

ドラえもん』ではのび太たちが、土管のある空き地でいつも遊んでいる。『サザエさん』ではカツオや中島らが公園で野球をしている。ボールが近隣の家のガラス窓を直撃し、その家の人(主に高齢男性)に「コラッ!」と叱られるのがいつものパターンだ。

これはマンガだけの話ではない。公園や空き地、校庭と、昭和の子どもは自由に遊べる場があちこちにあった。だが、今はそうした環境が激減。ほとんどの公園は球技禁止。野球やサッカーはチームに入らないと楽しめない。「三角ベース」はもはや完全に死語である。

付け加えれば、昔は地域が子どもを育てる文化があった。空き地の所有者は子どもが遊ぶことを黙認していた。留守にする親が子を隣家に預けることもあった。遅くまで遊んでいる子を、周囲の大人は気遣った。

こうした文化は責任の所在が不明確になり、いろいろと簡単ではない。だが、少子化が深刻化する今、見直す価値はあるだろう。

9位 電車の中で新聞を読む

昭和期、大都市圏の通勤・通学ラッシュの電車内は、新聞を読んでいる人だらけだった。紙面を大きく広げ、大股開きで読んでいる人は迷惑千万だった。

いうまでもなく現在も移動時に情報収集をしている人は多い。スマートフォンは新聞と異なり物理的に隣の人に迷惑をかけることはない。

ただし、そこから得られる情報はGoogleのアルゴリズムに左右される。多様性が求められる現代にあって、実は画一的な分野の偏った情報に限定されがちだ。また、総合的に情報を発信するニュースサイトは流動的であり、見出しをタップする必要がある。

これに対し新聞は多用で視覚的なメディアだ。新聞社によって報じ方に偏りはあるが、紙面をめくれば自ずと様々なジャンルの情報が目に飛び込み、記事の大小で重要度の違いもわかる。テレビ欄を眺めるだけでも何か発見がある。電車内で大きく広げて読むのはもちろん不適切だが、新聞自体をオワコン扱いするのは早計ではないか。

10位 お節介を背景とした「お見合い」で結婚する

日本の少子化は、誰がどう見てもシリアスな問題だ。そして、少子化以前に婚姻率も低下している。この話題になると、原因として価値観の変容や経済的な問題が真っ先に挙げられ、「結婚したい気持ちはあるけれど、相手がいない」という人については軽視される傾向がある。

昭和の一時期は、お見合い結婚が5割以上を占めていたというデータもある。つまり、お見合いが減ったことが婚姻率の低下の要因の一つになっているといえるのではないか。

現在は結婚相談所、婚活アプリ、カップリングパーティの類いは増えているが、それにはシステムに登録するなどの能動的な行為が必要になる。消極的な人は、それさえ抵抗があるだろう。有料のサービスならなおさらだ。

その点、お見合いはお節介な人が仲介しがちなため、向こうから話がやってくる構造があった。それに登録料も成約料も請求されない。お節介に救われたという人もいただろう。

プライバシーに踏み込みすぎず、当人の性自認や価値観を尊重したうえでのお節介なら、現代社会にプラスになる可能性も秘めているのだ。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年5月31日号)の一部を再編集したものです。

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