「パワハラ」を恐れて指導ができない上司
もう一つのありがちな問題としては指導が挙げられます。
私がハラスメント研修の講師をしたときに、受講者として参加していた管理職の方から「パワハラが怖くて指導できません」という相談をよく受けました。「部下に仕事を指示したところ断られたので諦めて自分でやった」とのことで、その理由を聞いたところ「パワハラと言われたくないから」と話していました。
本来であれば業務指示なので上司として命令することは正当な権利です。その仕事が若手にとってスキルアップのチャンスであれば、その旨をしっかりと話すことによって残業してでもチャレンジしたかもしれません。
最近は気にいらないこと、耳の痛いこと、楽ではないことを言われると「それハラスメントです」という誤った認識が世の中にあふれているように感じます。結果として上司がそれを真に受けすぎて目標管理もできず、指導もできない状態になり、若手社員は成長できないという悪循環に陥っているのではないでしょうか。
「叱らない」は指導とは言えない
最近は“叱る”から“褒める”指導へと変化してきています。これは決して間違っているわけではなく、むしろ時代に合わせた考え方で有効でしょう。ただし、肝心の“褒め方”を誤解している上司も少なからずいるようです。
指導方針として“褒める”を導入しているのですから、その成果が本人の成長に繋がっていなければなりません。指導方針を「叱る・怒る・わからせる・やらせる」などの言うことを聞かせる指導から、「傾聴する・承認する・支援する・交渉する」といった本人が気づき、行動変容を促す指導に変えているだけで、新人のスキルアップに繋げるという目的を忘れてはいけません。
これを理解していない上司は、「叱らない・怒らない・わからせようとしない・やらせない」という、指導とは呼べない行動を“褒める指導”と勘違いしてしまっているようです。
キャリアの見える化や目標管理、評価制度も必要ですが、同時に上司の指導力を鍛える研修もホワイト離職への対応策として有効でしょう。あくまでも目的は新人に業務の中でやりがいを見出してもらうことなので「残業させればよい」「本人のためだから過剰なノルマを与えて厳しくしよう」などと思っていると、単なるブラック企業と認識され、離職率が上がりますのでご注意ください。