「成長したい!」と思える職場づくりをする

「将来の見通しを示してあげてください」

私が社会保険労務士として冒頭の新井さんにしたアドバイスです。藤山さんの話だけ聞くと、あたかも「もっと仕事をさせればよい」「残業したいのならどんどんやらせよう」と考える方がいますが、それは誤解です。

むしろ長時間働くことで“やっている感”が出てしまうことのほうが生産性の低下や常態的な残業の要因となるので非常に厄介です。やるべきことは今の仕事がどのように会社や顧客、社会に関わっているのかなどを知り、仕事に意味づけをすることです。そして、それを積み重ねることにより「数年後の自分はどんな仕事をしているんだろうか」といった見通しを若手社員に示してあげることが重要です。

具体的には、手本となる先輩を身近に置いてモデルキャリアを見える化し「成長したい!」と思える職場にすることです。研修制度や計画的なOJTなど、「実際に成長できる」ことが期待できる職場であることも重要と言えるでしょう。成長した社員がその力を存分に発揮できる職場であることも必要です。力を発揮した社員がしっかりと評価される仕組みになっていることがやりがいに繋がるのです。

新入社員は寛大な気持ちで育てる

一般的には、離職率10%は決して高い数値ではないので数字を気にする必要はありません。ただ、10%でも新卒社員に集中しているのであれば会社になんらかの原因が考えられます。初めて新卒採用をする企業にありがちなのが、受け入れる企業側に“新卒”という認識が薄く、新入社員を中途採用と同じように受け入れてしまうことです。

この場合は、会社説明会や面接でミスマッチがないようにすべての面接官で認識を共有したり、受け入れ側の先輩社員に対して研修をしてから新卒を配属するメンター制度を導入する方法などが考えられます。

新卒採用する会社には「うちの会社のために貴重な新卒というカードを使って入社してくれた」「まずは育てよう」という寛大な気持ちを忘れずに迎え入れてほしいと思います。