「残業をする同級生」に焦るホワイト企業勤めの若者
「ホワイト離職」に悩んでいるのは企業側だけではありません。
「自分の将来のためにもっと厳しい環境で働きたいです」
こう言って退職願を持ってきたのは新卒で入社して2年目になる藤山さん(仮名)です。入社した会社は残業も休日労働も全くなく、上司も先輩も優しく、人間関係も問題ありませんでした。藤山さんの話では、入社早々は帰宅時間も早く、ワークライフバランスも保たれた環境で働いていたそうです。そんな藤山さんが不安に思い始めたのは、年末年始に大学時代の同級生と会ったことがきっかけでした。
「自分はこのままでいいのだろうか……」
同級生と再会するまでの藤山さんは今の会社に大変満足していました。しかし、現状の情報交換をしたときに、今の仕事をイキイキと話す同級生を見て急に不安になってしまったそうです。その同級生は、残業も休日出勤もあり、上司もパワハラではないけれど、厳しく指導をされているということでした。ただ、そのことを「充実している」と表現する友人の瞳が輝いて見えたそうです。
残業や休日出勤を多くしているからといって、よりスキルアップするとは必ずしも言えません。藤山さんの会社でも、マナー研修や先輩によるOJTなど、しっかりとした社員教育を行っていたそうです。内容だけ聞くと何もやっていないわけではないのですが、「残業してまで熱心に仕事をしている同級生」と今の自分を比較して急に不安になり転職を考え始めたようです。
「成長できる見通しが持てない」と退職を選ぶ
リクルートマネジメントソリューションズが2023年11月に発表した「新人・若手の早期離職に関する実態調査」によると、入社後3年以内に離職した人の離職理由で最も多かったのは「労働環境・条件がよくない」(25.0%)、次いで「給与水準に満足できない」(18.4%)、「職場の人間関係がよくない、合わない」「上司と合わない」「希望する働き方ができない(場所、時間、副業など)」(同率で14.5%)――でした。
その次に、「成長できる見通しが持てない」(13.2%)、「仕事にやりがい、意義を感じない」(13.2%)、「今後のキャリアが描けない、目指すキャリア形成につながらない」(10.5%)と続きました。
労働条件そのものではなく、自身のキャリアに不安を感じた離職理由が続いており、全体の約37%を占めていることがわかります。
さらに、「入社1年目では、どのような悩みや壁がありましたか?」という問いに対しては「仕事に正解がなく、どうすればよいかわからないことが多かった」が27.1%で最も多く、「与えられた仕事の意味ややりがいが感じられず、やる気が出なかった」が21.1%と続きました。また、順位は低いものの「仕事や職場に物足りなさがあり、成長できる見通しが持てなかった」(11.7%)というものもありました。
このように、入社3年以内の若手社員にとっては、職場環境や労働条件も重要なポイントである一方で、やりがいや成長も重要なポイントであると言えるのです。