まじめに暮らしている外国人はいたたまれない
ただ、現在、技術者や熟練労働者として働いている外国人は、留学生と同じく、ドイツの国境を越える前に滞在許可を取得しており、不法入国をする必要などない。言い換えれば、不法入国者が技術者や熟練労働者となる確率はかなり低いはずだ。なお、当然のことながら、不法滞在者が増えれば増えるほど、本当に庇護を必要としている難民の受け入れが妨げられる。
そもそも、現在、ドイツにいる1200万の外国人のうち、犯罪者は61万2000人(22年)だから、1140万人近い外国人は真面目に暮らしているわけだ。例えば、トルコ人は移民の歴史も長く、すでにドイツ国籍を取っているトルコ系移民も含めれば、その数は300万人近い。しかし犯罪率は、シリア、アフガニスタン、北アフリカの人たちと比べると圧倒的に少ない。つまり、一緒くたにされて迷惑しているのは彼らだ。
なお、私もドイツでは外国人の一員だが、もし、同じアジア人の顔をした犯罪者が増え、ドイツ人がアジア人全般を排斥するようになれば、おそらく居た堪れなくなるだろうから、“その他の外国人”の気持ちはよくわかる。
外国人には強く出られないドイツの苦い記憶
さて、治安回復のために、現在の社民党政府がどんな解決策を挙げているかというと、なぜか移民の統合政策の改善の話ばかりだ。ただ、統合は口で言うほど容易ではない。特に宗教が絡むと難しい。
外国人の中にはドイツに対して悪意を抱く人も多く、特にイスラム教徒は、悪気はないのかもしれないが、ドイツの法律よりもイスラムの聖典を重視しているケースが少なくない。本来なら、ドイツの法に従う気のない人たちには滞在許可を出してはいけない。
また、罪を犯した者には、即刻、出ていってもらうことが筋だ。ちなみに、強制送還実施のためには、二重国籍はかえって都合が良い。ドイツ国籍だけを持つドイツ人を追放することは不可能だが、多重国籍者からはドイツ国籍の剥奪が可能だ。
ドイツ人には今なおホロコーストのトラウマがあり、政治家も、外国人に対して何か要求すると厄災が降ってくるかもしれないと考えるのか、「触らぬ神に祟りなし」で、何十年もの間、外国人にはしたい放題をさせてきた。そのせいか、今ではドイツ全土に2800の回教徒の祈祷のための集会所があり、その中の約300は尖塔を備えた立派な回教寺院で、そこで、アラブの国から派遣されてきたイマームが熱い説教をしている(Statistaによる調査)。