自治体の駐車場で発電し庁舎に供給
例えば、常陽銀行の電力子会社「常陽グリーンエナジー」では、PPA事業として、茨城県八千代町の庁舎敷地内にある職員用駐車場に、車48台分の太陽光パネル240枚の屋根(ソーラーカーポート)を設置、2023年4月から発電する電力を庁舎に供給している。
2024年1月には、常陽グリーンエナジーは、PPA契約に基づき、日本物流開発の土浦営業所の倉庫屋根上に、太陽光パネルを設置し、電力供給すると発表している。初年度想定発電量は18万kWhで、同営業所の年間電力需要量の34.8%を太陽光で賄い、二酸化炭素(CO2)排出量は年間48トンの削減を見込んでいる。
なお、日本物流開発は、土浦営業所新設にあたり、常陽銀行からポジティブ・インパクト・ファイナンスを通じて資金調達を行っている。
太陽光発電設備の取得にも取り組む「しがぎんエナジー」
滋賀銀行は、2024年4月、電力子会社「しがぎんエナジー」を設立した。常勤8名、非常勤3名の陣容で、太陽光発電のPPA事業だけでなく、既存の太陽光発電設備の取得・運営事業にも取り組んでいる。後述する太陽光発電に関するさまざまな問題点もあり、既存の太陽光発電施設の売却を検討する事業者も増えるなか、しがぎんエナジーは、今年4月には、稼働済みの太陽光発電所2基(合計出力3.05MW)を、滋賀県と岐阜県で取得している。
その他、しがぎんエナジーでは、企業および行政のGX(グリーン・トランスフォーメーション)、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)に向けたコンサルティング事業、環境価値に関する事業(環境価値の創出、売買、仲介等)、脱炭素、資源循環に関連する事業会社への投資なども掲げている。
大企業だけでなく、中小企業に対しても、取引先や投資家などから、太陽光発電など再生エネルギー利用による脱炭素化を求める声は強まっており、地域に根差す地方銀行が、電力子会社を設立し、地元の企業や自治体の脱炭素化を後押しすること自体は理にかなっていよう。
総務省によると、太陽光発電設備の導入(稼働)件数は、2023年3月末時点で、約265万3千件(このうち、10kW以上は約69万件)に達している(総務省「太陽光発電設備等の導入に関する調査 結果報告書」2024年3月26日)。