世界最大都市「東京」の公共交通:大男総身に知恵が回りかね

このように見てくると、地下鉄網が張り巡らされた東京の公共交通については、世界の中でも優秀であり、インバウンド客によっては快適に違いない。

しかし、世界一便利かと言えば、そうではない。まず、地元住民にとっては通勤ラッシュの大きな問題がある。さらに、都市の範囲を厳密にして比較すると、意外な不便さもあることがわかるのである。

図表3を見てほしい。これは、都市の公共交通の充実度・カバー率を示すため、「道路系のバス停」と「軌道系の地下鉄・市電駅」から徒歩10分圏の人口の比率を算出し、OECD各国の最大都市の間で比較したグラフだ。グラフの都市の並び(赤数字)は、「地下鉄・市電駅」から10分圏の人口カバー率の低い順である。

地下鉄・市電のカバー率の低さが目立つ東京の公共交通
筆者作成

公共交通の利用の容易性というSDG項目がある点については冒頭で触れたが、公共交通の利用の容易性は、バスは停留所まで500m、鉄道や地下鉄は駅まで1kmと考えられている。図表3のデータでは、公共交通のカバー率の基準としてバス停、地下鉄・市電駅共通で徒歩10分以内としている。徒歩10分は徒歩速度が時速4kmとして666mに当たる。

こうした都市比較に際しては、単なる行政区域としての都市データを比較するとどこまで郊外を含んでいるかなど都市の成り立ちの違いでバイアスが生じる。そこで、ここでは、人口の密集度から都市域(都市核)を設定し、それと通勤でむすばれた地域(後背地)を合わせた「機能的都市圏」に着目し、そこでの公共交通のカバー率を比較している。