フィンランドでは名声や富はあまり通用しない。お国柄から、名声や富で私たちの価値や幸福度が決まるわけではないと心得ているのだ。代わりにフィンランド人はもっとひそかな充足感を求める。
例えば、アメリカとフィンランドではビジネスリーダーの乗る車が違う。アメリカでは企業トップの車はその企業の成功を象徴する。高級車であれば将来有望な安定した企業ということだ。
一方、フィンランドでは、派手な車は傲慢さや優越感の表れと見なされかねない。企業経営者は大成功してフェラーリに乗るようになっても、顧客を訪ねるときはおんぼろの小型車に乗り、富や名声を手にしても彼自身は変わっていないことをアピールする。
こうしたフィンランド人特有の幸福観にもかかわらず、大成功しているフィンランド企業もある。通信機器大手ノキア、スマホゲーム開発企業スーパーセルや指輪型健康トラッカーで有名になったオーラといったスタートアップ企業などだ。
フィンランドが今後も「世界一幸福な国」でいられるかどうかはまだ分からない。それでも国連の「世界幸福度報告書」は、世界中の誰もが幸福になっていいのだと改めて気付かせてくれる。
当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら