舌の健康度をチェックしよう

さて、いまこの瞬間、あなたの舌はどこにありますか?

舌全体が上アゴにベッタリついている人は舌力が十分。健全な状態です。一方、舌先が少し上アゴに触れるくらいか、もしくは口がぽかんと開き、舌が口のどこにも触れていない人は、舌力が低下しており、落ち舌になっています。

次に「舌の健康度セルフチェック」を載せました(図表1)。これを参考に、ご自分の舌をチェックしてみてください。

【図表1】舌の健康度セルフチェック
これができたら健康な舌。一方、全部満たせない場合には、舌力低下が疑われる。(『舌こそ最強の臓器』P.8~9より)

現代人は舌力が低下している

舌力低下の理由の一つは、食生活の劇的な変化です。柔らかすぎるインスタント食品やファストフードなどを食べる機会が増えた結果、しっかり噛んで飲み込むチャンスが激減して、噛むための筋肉と舌を使う必要がなくなってきたのです。

最近、断食ダイエットや、長めの空腹時間をつくる健康法がブームになっていますが、私はそうした風潮にも少なからず危機感を抱いています。生命の根幹である「食べる」行為を軽視していると、咀嚼や嚥下といった大切な舌の機能が衰えて健康を損なう恐れがあるからです。

また、身の周りの変化もあります。長時間悪い姿勢で座り続けて、パソコンやスマホやタブレットを見ていると、舌は重力に負けて下アゴとともに奥へ落ち込んで落ち舌となり、舌力も低下します。

舌は発話にも関わりますから、通信手段が電話からSNSに移り、「話す」機会が減ったことも、舌力の低下に直結しています。コロナ禍では対面で話す機会も大幅に減って、イベントや集まりでも大きな声を出せない日々が続きました。

舌力低下の広がりを目の当たりにしていたとはいえ、そのような患者さんに対して、アレルギーがひどければ薬を処方する、いびきがあれば横向き寝を指導するといった対症療法しかできず、自らの無力さに苛まれる日々を送っていました。