守るべき人を守り、さらけ出した会見

会見の後半では、あのラブソングを歌っている時に「自分がどうにかなりそうだった……」という迷いも吐露した。

全てを隠すことなくさらけ出した。

守るべき人を守りながら。

記者が「メンバーに報告したらなんて言ってましたか?」という質問には「驚いてました」と言った。実際はどうだったかは分からないが、ここでは「おめでとう」という言葉はなかった。

この日の朝に会見をすると決めて、会場に入りライブを行い、そして会見を行った。

とてつもなく長い1日だったろう。

タクヤは自分らしく会見をやりきった。

メンバーたちは初めての笑顔を見せた

会見を終えたタクヤにイイジマサンが「お疲れさま」と言って頭を下げた。イイジマサンの「男らしくない」から始まったこの日。「お疲れさま」の言葉が僕にまで沁み渡った。

タクヤは僕に右手を出して握手を求めてきた。

彼の右手と僕の右手で強く握り合うと、彼が言った。

「ありがとう」

エレベーターを降りて、廊下を歩く。メンバーたちはこの会見をどこで見ていたんだろうか? ライブ会場から移動する車の中で見ていたのだろうか?

そう思いつつ、タクヤと楽屋に戻る。

そしてタクヤが楽屋の扉を開けると、目の前のソファーに、リーダー、ゴロウチャン、ツヨシ、シンゴが一緒に並んでいた。そしてタクヤに声を揃えて言った。

「結婚おめでとう!」

みんなの顔に今日初めての、本当の笑みが浮かんでいた。

そしてタクヤにもやっと笑顔が出た。

この会場に入ってから、メンバーの誰もが「結婚」のことも何も口にしなかった。それがプロとしてのエチケットだと思ったのだろう。

そして、楽屋を出て行く時に誰も「頑張ってね」と声をかけなかった。あそこで中途半端な言葉をかけることは良くないと思ったのかもしれない。