老後への備えは「固定費を下げて貯金を増やす」がベスト

2019年、金融庁が「公的年金以外に老後資金として2000万円が必要」とした報告書を公表し、「老後2000万円問題」が話題になりました。

年金受給額は減らされ、年金受給の年齢も繰り下げられ、少なくとも年金をもらえるまでは、貯金を切り崩すか、働いて収入を得るかしかありません。サラリーマンの退職金も全体的には減ってきて、計算が狂ったかたもいるのではないでしょうか。

これが自営業となれば年金は国民年金だけという人が多く、2000万円問題どころではありません。ましてや子育てもひと段落して、いちばん貯金できる50代に家賃を滞納しているということは、今現在、預金もほとんどないということでしょう。

 私 :いくつまで働くのかにもよりますが、年金だけで生活は厳しくないですか? ご夫婦ふたりなら、荷物を思い切って断捨離して、コンパクトな部屋への転居がいいと思うのですが。
賃借人:でも仕事さえ続けていたら……
 私 :まずは固定費を下げて貯金の額を増やしましょう!
賃借人:……
 私 :エリアで生活保護での家賃補助(住宅扶助)を受けられる条件を確認してください。その条件内のところに転居しておけば、最悪、補助を受けられますよ。

いきなり「生活保護」という言葉に、少し驚いたようでした。

地域にもよりますが、生活保護を受給するには家賃に条件があります。広すぎるところ、家賃が高すぎるところは、一般的には受給の妨げになります。

「老後の住処」を老後に決めるのは遅すぎる

また年金が少ない場合、生活保護費との差額分を受給できる場合があります。この時の家賃も同様で、高すぎる家賃の場合には補助を受けられません。

つまり節約して生活しているけれど、それでも足りないといった場合に、申請すれば家賃補助を受けられる場合が多いのです。

50代後半で貯金もなく、その日暮らしとなれば、今後の生活はかなり厳しくなってしまいます。まして国民年金しか加入していない賃借人は、働けなくなった先をどう考えていたのでしょうか。おそらくそこまで思いが巡らなかったのでしょう。

でも実際に身動きとれない年齢になれば、引っ越し作業すらままなりません。まして高齢者になると、貸してくれる家主がぐっと減ってしまいます。だからこそまだ仕事をしている間に転居しておくのが、いちばん理想的です。そして生活保護受給ラインの物件に住んでいれば、万が一の時にさらに転居することなくそのまま家賃補助の申請ができます。

一度奥さんとよく話し合ってもらうようお伝えし、その日は電話を終えました。

一部屋だけ照明がついている大きなマンション
写真=iStock.com/c1a1p1c1o1m1
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