「上出来だった」「私はリニア反対」
鈴木修氏は翌4日朝、川勝氏との会談に関連し、15年にわたる川勝県政について、報道陣に「上出来だった」「私はリニア反対。東京―大阪が完成したら、一極集中が避けられない」などと筆談でコメントしたという。「リニア反対」のくだりは、静岡朝日テレビが画面の隅にテロップで報じただけだったが、ネットメディアなどで拡散されたこともあり、衝撃が広がった。
川勝氏が鈴木修氏の意向を汲んでリニアに反対していたことが判明した、と静岡政財界関係者に受け止められたからだ。その鈴木氏が推す後継知事候補が引き続きリニアに反対するのではないか、との憶測も呼ぶ。
鈴木修氏が「次の知事は、鈴木康友か、細野豪志(元環境相、自民党衆院議員=静岡5区)がいい。官僚はダメだ」と周辺に言い放った、との情報も伝わってきた。
鈴木康友氏は、浜松市出身で、旧民主党衆院議員2期を経て、07年に鈴木修氏の支援を受け、浜松市長に初当選し、4期務めて退任した。浜松市に建設される県営の新野球場について、鈴木康友氏が、鈴木修氏が求めるドーム型球場実現に奔走するなど、その傘下にあるのは周知されているだろう。
名前が上がったもう一人の細野氏は、5日までに鈴木修氏を浜松市内に訪ね、「今回は国政でやりたい。自民党に入って初めての衆院選に臨みたい」と断りを入れ、了承されたという。その直後、細野氏は「知事は康友でいい。リニアは国策だから、反対できない」と周辺に語り、鈴木康友氏支持に回った。
連合静岡も、自動車総連を中心に、浜松市長時代に支援していた鈴木氏支持に動く。
「『反鈴木修』を前面に出してもいい」
こうした流れに抗うように、大村氏が4月8日、報道陣を前に、石川嘉延前知事、県中部経済界などの支援を受け、無所属で出馬することを明らかにした。
大村氏は、静岡市出身で、自治省(現総務省)に入り、10~11年に川勝知事の下で副知事を務めた後、総務省地域力創造審議官や新型コロナウイルス感染症対策地方連携総括官などを歴任し、23年に退職した。コロナワクチン接種の推進・普及に功があったとして、菅前首相、二階俊博元幹事長、武田良太元総務相、松本剛明総務相らから信頼を得て、知事選での支持も取り付けている。
武田氏は、大村氏に対し、「『反鈴木修』を前面に出してもいい」とアドバイスする。同じ二階派の細野氏とは、
当初は6月県議会初日に辞職するつもりだった川勝氏が、4月10日に辞職願を提出した。5月9日に失職することと合わせ、知事選が5月に前倒しされることが決まった。短期決戦の方が知名度に勝る鈴木康友氏に有利に働くとの計算もあったのだろう。
渡辺氏は、4月8日のニッポン放送の番組で、知事選出馬について「半分半分というところだ」と含みを持たせたが、13日に自身のフェイスブックを通じ、出馬見送りを明らかにした。理由を「泉健太代表から『国政にとどまってほしい』と懇願された」などと取り繕ったが、立民党県連をまとめられず、連合静岡の支援を得られる見込みもなかった。
「環境との両立を図って推進していく」
大村氏が12日、鈴木康友氏が15日に記者会見し、ともに「オール静岡」を掲げ、正式に出馬を表明した。大村氏は15日の記者会見で基本政策を発表した。リニア建設工事をめぐる両氏のスタンスの違いが鮮明になった。