人びとはどのサービスをどの程度利用し、その傾向は年々どのように推移しているのか――。プレジデントオンライン編集部がビデオリサーチ社と共同でお届け する本連載。首都圏の消費者を「お金持ち」層(マル金、年収1000万円以上)、「中流」層(マル中、年収500万円以上から1000万円未満)、「庶民」層(マル庶、年収500万円未満)という3ゾーンに区切り、生活動態の分析を試みている。今回からは、郊外・都心を問わず次々に登場する複合商業施設 を検証していく。
今回は前回の連載で西川りゅうじん氏が指摘した欧米型会員制の大型店の先駆けとしてすでに上陸しているコストコとIKEAについての年収層別経年変化を見ていこう。
実はこの2つの大型店は複合商業施設ではないが、郊外型の大型店舗としてはかなりの利用度を示しているのである。そこで、番外編的に取り上げる価値があると調査隊は判断した。
その前に、コストコとIKEAについて簡単に解説しておこう。
コストコはアメリカに本拠地をもつウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型卸売小売)である。1999年に福岡県に日本第1号店を開店、その後も店舗数を増やし、2012年11月現在12店舗、来年も関東圏では千葉県や茨城県など、数店舗が開店する予定だという。
店内はまさに巨大な倉庫。なんでもまとめて大量に売られている。巨大な冷凍ピザや冷凍バースデーケーキなど、値段はかなり安い。が、品質については、練馬区在住、2人の子どもをもつA調査員をして「一度は買ってみたが…とにかく、アメリカっぽいです」と、お茶をにごす。
隣接されるフードコートもホットドッグやピザ、チュロスといったアメリカンフードが並ぶようだ。
一方のIKEAは、スウェーデン発祥で現在はオランダに本社を置く、組み立て式の格安家具が売りの大型家具店である。2006年に日本に再上陸し、船橋店オープン前の1ヶ月間に明治神宮外苑にある銀杏並木を利用して屋外ショールームを設置し、住空間提案とカタログ配布を行った。また港北店オープン前にもこのようなプロモーションが行われた。その開店前プレゼンテーションが「先取り」志向のマル高やマル中層をつかんだとも言えそうだ。
前出のA調査員はこのIKEAに対しても「ぼくはニトリの方がいいです」と断言。紅一点のI調査員も「買った家具の組み立てが大変。車がなければ行けないし、一人暮らしの女子には無縁」とクビをひねった。
では各層のグラフを見てみよう。
注目すべきはマル中層とマル庶層のコストコの伸びだろう。
マル中層は「ちょっと外国に行ったかのような」欧米風の匂いに弱く、またテレビや女性誌の煽りにも弱い。またマル庶層も含む伸びは、年会費の4200円を支払っても元を取れるほどの低価格、とも言えそうだ。
しかしインターネット上のユーザーのコメントを見ると「4200円払わなくても、コストコの通販を利用すればいいものを安く買える」といったものもあり、低価格志向、インターネットでの通販志向への流れは止められない様相だ。これはIKEAにも通じる。
次回は西川りゅうじん氏に複合大型商業施設の現在と未来について、総論を聴くことにしよう。
※ビデオリサーチ社が約30年に渡って実施している、生活者の媒体接触状況や消費購買状況に関する調査「ACR」(http://www.videor.co.jp/service/media/acr/)や「MCR」の調査結果を元に同社と編集部が共同で分析。同調査は一般人の生活全般に関する様々な意識調査であり、調査対象者は約8700人、調査項目数は20000以上にも及ぶ。
「愛・地球博」の“モリゾーとキッコロ”や「平城遷都祭」の“せんとくん”の選定・広報、「六本木ヒルズ」「表参道ヒルズ」「三井本館」「コレド日本橋」「上海環球金融中心」のコンセプト立案や商業開発、「つくばエクスプレス」沿線PRに携わるなど産業と地域の元気化に努めて来た。厚生労働省「健康寿命をのばそう!」運動スーパーバイザー。瀬戸内海沿岸の7県による「瀬戸内ブランド推進協議会」プロデューサーを務める。