「女の子と、遊べばいいのに」

祖母が亡くなり、「ひとりぼっちになってしまった」と、心細さを感じた小西さん。この先の支えがなくなってしまった、と。それでも生きていくためには働かなければならない。

そこで浮かんだのが、人生で一番どん底にいた自分を支えてくれた訪問看護師の姿だ。「福祉の業界に進むことしか考えられない」と考えた小西さんは初任者研修の資格が取れる福祉の学校に入った。祖母の介護経験を胸に、高齢者介護に携わろうと思っていた小西さんに、そこで大きな転機が訪れた。

「学校でできた友人が障がい者のグループホームに見学に行くと言うので、私もついて行くことにしたんです。そこにいた、40代の統合失調症の男性が『何をしても楽しくない』『生きる喜びを見つけるのが本当に難しい』と話しているのを聞いて」

小西さんは、思った。

「女の子と、遊べばいいのに」

現状には、どのようなサービスがあるのだろう。気になって調べたところ、障がい者の性には、ケアやサポートがほぼないことを知り驚いた。

ここからの、小西さんのフットワークは軽やかだった。まず大阪に一つだけあった、障がい者専門風俗店を探し当て、働くことにしたのだ。

実母が障がい者の息子とセックスしている現実

「働き始めてみるとお客さまは身体障害のある方で、自分でお店の情報を調べたり、予約が取れたりできる方ばかり。それが難しい知的障がいのある方はどうするんだろう。これ、ちゃんと考えないといけないことなんじゃないかなと」

ないならば自分がそのサービスを立ち上げるしかないのでは? でも――。悩んだ小西さんは福祉の学校でお世話になっていた教員に相談することにした。怒られるのではないかと恐る恐る自分の感じたことを話したところ、「本当に大事なことだから頑張ってほしい」とむしろ背中を押されたという。

また、その時に聞いた話が、あまりにも衝撃だった。

「先生が前に関わっていた障がい者のお子さんの話を聞いたんです。何気なく、週末は何してるの? とその子に聞くと『いれている』と答えたそうで。その答えを不思議に思い、深く聞いたところ、その子の性処理を、実のお母さまが行っていることが分かり。お母さんは、妊娠した息子の子どもを堕ろしたこともあると。先生がお母さんに話を聞きに行くと『自分がどうにかしないと、子どもが性犯罪者になってしまいそうだったから』と涙ながらに話されたそうで……、もうあまりにショックでした。そんなこと、絶対にあってはならない。何で、お母さんだけが頑張らないといけないの、と」

その母親たちに小西さんは、かつての自分の苦しみを重ね合わせた。

「祖母を介護していた時、自分ひとりでどうにかしなければならないと思い込み、状況から逃れることができないところまで自分を追い込んでしまった。このお母さんも悩みを自分ひとりで抱え込み、その結果、望まない役割までも引き受けてしまったのだと。それが、介護していた自分の状況と重なって、どうか一人で頑張らないでください。私でよければ、お子さんの性について考えさせてくださいという思いで立ち上げました。今も日本のどこかで一人悩んでいるお母さんが私を見つけてくださるには、ちゃんとした看板が必要だと思ったんです」

「輝き」という名には、「障がい者はもちろん、家族や支援者の人生も輝けるものでありますように」という願いを込めた。