4.3%だけゼロエミッションであればいい
海外が製品のサプライチェーンに対してゼロエミを義務付けるといっても、すべての企業がそうするわけではありません。世界全体での割合でいえば、ごく限定的になると思われます。
ここでは仮に「米国とEUのすべての企業が輸入品に対してゼロエミ電源100%を義務付ける」と想定した上で、日本の輸出のために必要なゼロエミ電源の量を勘定してみます。
日本の対世界の輸出総額は2019年は7060億ドルでした。
このうち、対EU輸出総額は820億ドルで、対米輸出総額は1400億ドルです。したがって、これに対EUと対米分を足すと2220億ドル。これは輸出総額の31%にあたります。
これに対して日本のGDPは5兆1540億ドルでしたから、米国とEUへの輸出合計金額はGDPとの比率では222/5154=4.3%に過ぎません(以上のデータは日本貿易振興機構・ジェトロによる)。
ここでGDPを1円生み出すための電力消費と、輸出を1円にするための電力消費を等しいとすると、日本の電源の4.3%だけゼロエミッションになっていれば、それを使うことで米国とEUへの輸出製品はすべてゼロエミッション電源で賄えることになります。
日本のゼロエミ電源は“あり余っている”
具体的な業務手続きとしては、輸出する製品について投入電力量を計算し、実際にそれだけのゼロエミ電力を買えばよいのです。
もしそれで足りなければ、それに見合うだけのゼロエミ電力の証書である「非化石証書」を買えばよいのです。
日本のゼロエミ電源比率は2018年度で23%でした。これは2030年度には44%になる予定(図表1)なので、実は日本のゼロエミ電源は、すべての輸出を賄ってなお“あり余っている”のです。
もしも強引に再エネを大量導入して、前述のように電気料金が高騰すれば、日本の製造業は壊滅するでしょう。