「とりあえずやってみよう」

きっかけとなったのが、プロ雀士の黒木真生氏からの相談だった。麻雀の正しい歴史をまとめたいが無料で書くのはつらい、手伝ってくれないか。

収益を折半することで編集業務を請け負った。noteで「近代麻雀黒木」を共同で立ち上げたところ、月に数十万円の利益を安定的に生み出せた。「これならば、会社として力を入れれば一定の成果が見込める」と判断し、21年10月に「近代麻雀note」をスタートした。

「何か戦略があったのかと聞かれますが、特にありませんでした。雑誌を転載するわけですから、元手がかからない。だから、極論を語れば、売り上げがゼロでもリスクはありません。それならばとりあえずやってみようと」

現在は月に40本の記事を販売している。雑誌からの転載と書き下ろしのオリジナルコンテンツの比率は半々だ。note専業の編集部員は置かず、『近代麻雀』編集部の編集長以下6人で対応しているので人件費もかからない。

金本編集長
撮影=プレジデントオンライン編集部
noteを始めるにあたっての設備投資はなし。「そういった気軽さもnoteの良さです」(金本編集長)

コンテンツの中で人気なのはMリーグ関連の漫画とオリジナル記事。プロ雀士による対局直後の「生の声」は引き合いが強い。

「どうして、あの牌を切ったのか」「あの待ちはないだろ」。そんな視聴者の素朴な疑問にプロ雀士が興奮冷めやらぬ中で赤裸々に解説する。「コンスタントに数万円売れ、定期購読者が増える人気コンテンツです」

将棋や囲碁と麻雀の決定的な違い

なぜ、そこまで読者を惹きつけるのか。その答えは麻雀の競技性にあるという。

「将棋や囲碁では、アマチュアがプロに勝つのは現実的ではありません。ですが、麻雀は運の要素も大きく実力差が出にくいため、アマチュアも自分の意見を言いやすい土壌があります。Mリーグの視聴者同士や視聴者とプロとの間で議論が生まれやすく、紛糾して時に『炎上』します。炎上しやすい競技だからこそ、見ている側は打ち手が何を考えていたかを知りたいのでは」

「生の声」を多くのファンは自分の考えと照らし合わせて読むことで、さらに議論が生まれたり、Mリーグを観戦する楽しみが増したり、麻雀サークル内に良い循環が生まれている

もちろん、ニーズがあるとはいえ、誰もが自身の対局を振り返ってくれるわけではない。「お願いしても2回に1回は断られる。断られるとけっこう、ショックなんですよ」と苦笑するが、依頼の成功率5割は驚異的な数字だろう。依頼方法が気になるが非常にシンプルだ。