どうにかして雑誌を存続させたい
『近代麻雀』の創刊は1972年11月。活字の麻雀専門誌として生まれた。当時は阿佐田哲也の小説『麻雀放浪記』がヒットしていたころ。麻雀人気を取りこむ狙いは当たり、部数は順調に伸びた。
5年後には漫画雑誌『劇画近代麻雀臨時増刊』が誕生。空前の麻雀劇画ブームを追い風に10誌以上が競合するまでに市場は急拡大した。一方、本家の『近代麻雀』は部数を落とす。70年代後半に麻雀ブームが落ち着いたことや、活字文化の衰退で平成が訪れるころに活字としての『近代麻雀』は廃刊になった。
麻雀劇画市場も読者の高齢化や遊びの多様化で縮小の一途をたどる。競合他社は相次いで撤退し、竹書房も『近代麻雀オリジナル』『近代麻雀ゴールド』を廃刊し、残すは漫画に鞍替えして復刊した『近代麻雀』だけとなった。
競合はいないものの雑誌離れの流れには抗えず、「ここ10年で部数は半減。読者も高齢化し、採算が非常に厳しい状態が続いていた。会社の意向はともかく、個人的にはあと数年で廃刊すら頭によぎっていた」(金本編集長、以下同)
東大卒という異色のキャリア
このところ主力雑誌を廃刊する出版社は珍しくない。だが竹書房にとって『近代麻雀』は特別な雑誌だ。同社は『近代麻雀』のために誕生した会社だからだ。社名の「竹」は麻雀の索子の竹の絵柄から。近年はアニメやライトノベルが堅調だが、竹書房の原点はあくまでも麻雀だ。
そして、『近代麻雀』に誰よりもこだわりを持っていたのが金本編集長でもある。東京大学在学中から雀荘で働いて留年するほどの麻雀好き、そして『近代麻雀』の大ファンで「この雑誌をつくりたい」と竹書房に飛び込んだ。
それ以降の約20年、『近代麻雀』編集部一筋。東大卒の入社も入社後のキャリアも同社では異色だ。「ほかに何もできないと思われているだけですよ」と謙遜するが、雑誌を守りたい気持ちは人一倍強い。
読者の頃から愛し続けてる雑誌、だからこそどうにかして存続させたい。そのためにはこれまでと違う形で利益を上げなければいけない――。約4年前に編集長についたときからその手段として、ネットでの展開を視野に入れていた。
当時も今も雑誌のウェブサイトは、広告収入モデルでの無料配信が主流で、アクセス数重視の傾向が強い。『近代麻雀』も「近代麻雀THE WEB」という広告収入型のサイトをすでに開設していたが、金本編集長は「そこを伸ばす発想はなかった。自社のプラットフォームにこだわらずに、自社のコンテンツをどうにかしてWEBで売れないかを考えていた」と語る。