「除名」経験者が語る処分の代償
岸田首相と同じ1993年当選組で、小泉政権時代の2005年、郵政民営化に反対し党を除名(2017年に復党)された荒井広幸氏は、筆者にこう語る。
「実際に何度も選挙をやった立場から言えば、これらの処分は大きなダメージになります。中には、たとえば『党員資格停止1年』に関して、1年以内に衆議院選挙があれば党の公認を得られない反面、選挙がなければ特に問題もないという人もいます。しかし、党が処分を下したという意味、処分の理由などを考え合わせると、ものすごくマイナスになります」
「処分された幹部の中には、『ポスト岸田』を目指すような人もいますよね。通常は、若手や中堅議員に分け与えるべき立場の政治家が、自分もキックバックを受けていました、でも詳細は知りません、となると、リーダーになる資格はないですよ。若手議員からすれば、『この人はこの程度の人。腹が据わっていない』って思っちゃいますよ。やはり、『申し訳なかった』と非を認め、議員辞職をして次の選挙で返り咲くことを目指すべきだったと思いますね」
「私は、もう岸田さんを支持しない」
荒井氏は、2005年8月、当時の小泉首相に離党届を提出して門前払いを受け、武部勤幹事長宛てに出し直した過去を持つ。荒井氏は、直後の「郵政民営化解散」で自民党が圧勝した後、除名処分となるのだが、そのとき、参議院議員だった荒井氏は「次の選挙は難しいだろうな」と実感したと語る。
郵政民営化の是非は、政策に関する考え方の違いだが、今回は政治資金規正法違反事件に絡む処分である。有権者の反応はもっと冷たいはずだ。すでに派閥は解消したとはいえ、最大勢力を誇った安倍派が壊滅的な打撃を受ければ、自身の処分は回避した岸田首相はもとより、しぶしぶながら処分を主導した茂木敏充幹事長への不満も一段と高まる。
「亡き安倍元首相が、一致団結して岸田政権を支えようと言うから支えてきただけ。少なくとも私は、もう岸田さんを支持しない」(安倍派中堅議員)
先に紹介した塩谷氏のコメントからもうかがえるように、9月の自民党総裁選挙で再選を目指す岸田首相にとって、今回の処分が、求心力を高めるどころか大きな遠心力へと変わっていくことは避けられそうにない。