白いボックスを使用する理由について上原氏はこう語る。

「ボックスは使い捨てのため衛生的。子犬や子猫は周囲が見えるより、狭くて暗い所の方が落ち着く。ボックスをブリーダーに購入してもらい、その売上は保護犬や保護猫の保護と譲渡に使っている」

印象こそ悪いが、感染症予防を考えると使い回しのケージより衛生的なのは確かだろう。

バックヤードでは、数名の獣医師によって1匹ずつ健康診断とボディチェックが行われる。チェック項目は体重、目鼻口耳の状態、門歯、嚙み合わせ、頭蓋骨、手足や指、骨格などまで事細かだ。皮膚や全身の健康状態、心臓についても雑音がないかなどを検査する。

オークション会場によっては独自のルールがあることもあり、それもこの場でチェックされることになる。

筆者が訪れたオークション会場には「門歯が生えてない生体は出品不可となります」という張り紙が出されていた。オークション側が独自の規制ルールを設けているのは、監督官庁である環境省がこれまで規制の基準を提示してこなかったからだという。

複数の犬、猫が同時にオークションにかけられていく

獣医師のチェックで異常が見つからなかった犬猫は、オークション用の写真を撮影したうえでボックスに戻されて順番に競りにかけられていく。

異常が見つかった犬猫はもちろん出品できないので、ブリーダーに戻される。ブリーダーが里子に出す場合は、上原氏らが大学病院と連携してオークションの売上で建設運営している動物病院で治療した上で、里親を探すのだという。会場には、ここで里親と巡り会うことができた子たちの写真が何枚も貼られていた。

オークションが行われる大きな会場では前面には大きな画面がいくつも設置され、同時に4匹が競りにかけられていく。係の者が子犬や子猫を抱き上げ、画面に映像が映し出される。バイヤーたちは画面を見ながら写真とその横に表示される生年月日や体重、身体状況、ブリーダーの名前などをチェックして入札していく。今はオンラインでもオークションに参加することができるという。