身体が大きい子は、値段が小さい子の10分の1のくらいになることも
競りにかけられる犬猫の説明を見ていると、筆者ですら生年月日が偏っていることに気づく。会場には「本日出品できる生体は、何月何日より前の出生」という主旨の表示がされ、その前日の3日間に出生日が集中していた。だがバイヤーたちがそれを気にする様子はなかった。
1匹が競り落とされるまでの時間はわずか数秒。最初の提示から値段が上がっていく子もいれば、下がっていく子もいる。同じようなゴールデン・レトリバーでも、身体が大きい子の値段は小さい子の半分から10分の1くらいになる。競り値がこれだけ違えば、ブリーダーが少しでも小さい状態でオークションに出したいと思うのは自然だ。
数十万円がつく子犬がいる一方で、底値の数万円で落札される子もいる。
「底値で落札していくのは、保護活動をやっている愛護団体が多い。競りには来ないが、知り合いのバイヤーに頼んで買ってきてもらうらしい。保護猫として里親を探し、数万円の譲渡費用をもらって譲渡する」(上原氏)
愛護団体と言ってもビジネスなのだ。競り落とされずに流札で終わってしまった子はブリーダーの元に返されていく。
会場では、競り落とした子をボックスから出して抱き上げ、健康状態などをチェックするバイヤーたちが何人もいた。出品したブリーダーが、他のブリーダーが育てた子犬を競り落としていくこともある。
会場内のあちこちでバイヤーたちが持参のキャリーケースや、会場のボックスに入った子犬たちを運んでいく。一度に何十匹も競り落とす大手ペットショップは、会場横にワゴン車を横づけして黙々と車につめ込んでいた。オンラインで地方のバイヤーに競り落とされた子は、翌朝に飛行機で運ばれていく。
まだ生後2カ月足らずの幼い子たちはオークションで売買され、見知らぬ場所へ運ばれていく。そこで彼らを待っているのは誕生日を祝ってくれる飼い主とは限らない。親ガチャならぬ“飼い主ガチャ”が待っているのだ。
〈《愛犬の誕生日が違う?》「正直者がバカを見る状態はダメだ」ペットオークションの協会長が“誕生日偽装”の解決を「難しい」と言う理由〉へ続く