鉄道雑誌が歯止めになっていた

特急「やくも」の先頭車両に抱きつく男。手には大きなレンズを装着したカメラが握られている
画像提供=AERA dot.編集部
特急「やくも」の先頭車両に抱きつく男。手には大きなレンズを装着したカメラが握られている(Xに投稿された画像を一部加工しています)

この20年ほどで鉄道写真の世界は大きく変化した。

フィルムカメラの時代、撮り鉄が自慢の作品を発表する場は鉄道雑誌だった。特に読者からの投稿に力を入れているのは、「鉄道ファン」(交友社)「鉄道ダイヤ情報」(交通新聞社)などが知られている。

ひとくちに撮り鉄といってもこだわりのポイントはさまざまだ。列車の姿をはっきりと1枚の写真に収める「型式写真」を撮る人がいれば、列車を周囲の風景などとからめて「芸術写真」を目指す人もいる。

「鉄道雑誌には読者の投稿写真で鉄道の動向の紹介をするページがあります。コンテストのページに応募されるのは芸術性の高い写真です」(小林さん)

一方、鉄道雑誌は迷惑なことをして撮影した写真を掲載しなかった。そのため、撮り鉄の迷惑行為が表面化することほとんどなかった。

ところが、インターネットの普及とともに、個人が鉄道写真を自由に発表できるようになった。

「まず、鉄道ファンがホームページを開設し、そこで写真を公開し始めました。その後、写真を投稿できるブログを利用する人が増えた。そして今はSNSが中心で、特に多いのはXとインスタグラムです」

さらにカメラの進化も撮り鉄の増加に大きく関係しているという。

「大学時代はバシッとピントの合った走行中の列車を撮るのは大変でした。なにせ、私のカメラはマニュアルフォーカスでしたから。それにフィルム代がかさみました。今のように、1回の撮影で何百枚も撮ることはできなかった」