地元の友達A君が、次の衆院選に立候補した。それはぜひ応援したい! ということで、さっそくフェイスブックに投稿。「みなさん、衆議院選挙に立候補したA君に投票お願いします!」――この行為が、公職選挙法(以下「公選法」)違反となることはご存じでしょうか。
選挙運動の方法は、公選法で厳しく制限されています。そもそも「選挙運動」とは、(1)特定の選挙について(2)特定の候補者を当選させるために(3)選挙人に働きかける行為です。冒頭の例は、(1)特定の選挙について(次の衆院選)(2)特定の候補者(A君)を当選させるために(3)選挙人(選挙権を持つ人)に働きかける行為なので、選挙運動です。
選挙運動は、公示日前に行うことが禁止されています。選挙期間中も、文書図画(文字や象形による表示)による選挙運動は、候補者本人による一定のビラやはがきなど以外は認められていません。ネットの書き込みも文書図画と解釈され、一律禁止。そのため、冒頭の例は違法です。ツイッターやブログ、メールも同じです。実際お咎めがあるかどうかは別の話ですが。
また、選挙期間中は、投票を呼びかけなくても、候補者の名前を含む書き込みをするだけで、文書図画による選挙運動禁止の脱法行為とみられ、違法になるおそれがあります。そのため多くの候補者は、選挙期間中、HPやブログの更新自体を自粛しているのです。
つまり、今の公選法の解釈では、ネットへの書き込みで候補者を応援することはできません。選挙期間に入ったらネットでは候補者の話題自体が一種のタブーになり、情報発信や新規情報収集も困難となります。
では、法に触れずにネットでできることは何でしょうか。まず、規制に違反しない範囲で一般的な政治問題について書き込むことはできます。また、ただ単に「選挙に行こう」と呼びかけることもできます。このような投稿が多く集まれば、若い世代の投票率や投票結果に影響を与えるかもしれません。加えて、候補者のブログでも、選挙期間前の書き込み削除までは求められないので、投票の判断材料にしてもらうことはできます。
以上、公選法の規制をみてきましたが、正直なところ、規制自体が不合理なのでは? と思われる点が多いのは事実です。
まず、公示日前の選挙運動禁止について。この規制の目的は、無用な競争を排除することだと言われていますが、候補者の主張や人となりを知る機会を減らし、結果的に知名度がもともと高い候補者が有利になる弊害のほうが大きい気がします。また、実際には、選挙運動ではない政治活動と称し、候補者が、公示日前から街頭演説などを行っている状況では、その効果も疑問です。
次に、ネットによる選挙運動の一律禁止について。そもそも、文書図画による選挙活動制限の趣旨は、「お金のかからない選挙の実現」です。ネットは無料ツールの代表格で、選挙での利用を促進してもいいものです。ネットの選挙運動禁止は、ネットがない時代に作られた法律が放置された結果にすぎません。
世の中に山ほど法律はあれど、公選法ほど、「違反は違反だけど法律がちょっとおかしいんじゃない?」と言いたくなる法律に出合ったことがありません。悪法(と言ってしまうのには勇気が必要ですが……)もまた法なりで、知識を持つことは必要ですが、多くの人に公選法の問題点を知っていただき、一刻も早く公選法の抜本的な改正がなされることを切に願います。