自分の送別会を仕切りだしたHさん

一方、思い通りに「人を操る」というのは、人をコントロールしようと考えている状態です。

このような考えを持っていると、結果的には皆に嫌われることになります。

Hさんが退職することになり送別会がありました。Hさんの理想は涙ながらに引き止められ、名残惜しげに見送られることです。ところが、行ってみると送別会という体裁のただの飲み会の雰囲気で、それぞれが楽しんでいます。

小林音子『アメリカの中高生が学んでいる話し方の授業』(SBクリエイティブ)
小林音子『アメリカの中高生が学んでいる話し方の授業』(SBクリエイティブ)

しかし理想と違うことに腹が立ったHさんは「理想通り」を望み「私が辞めると聞いてどう思った?」「これからほんとに大丈夫?」「私は会社に残ることもできたんだけど……」「あなたが昇進したときのこと覚えてる? 私がさ……」「あのプロジェクトをやり終えてないことが心配で……」などと思い通りの回答を得られるまでみんなに話しかけました。自分の思い通りに言わせよう、褒めさせようとゴリ押しし続けたのです。

最後には「この送別会の仕切りはどうなの?」「そろそろ私へのメッセージを一人ずつ聞きたいな」などと送別会を仕切りだしてしまいました。理想と違う現実を思い通りにするために人を「操ろう」としたのです。これは嫌われてしまうことは明白です。

理想通りの送別会ではないとわかったときに、Hさんがそのことを受け入れ、理想通りを諦めることができたら違ったでしょう。諦められなかったため、どうにか相手を操ってでも理想通りにしようとしたのです。

【関連記事】
【第1回】「誠実だと思われたい」きれいな言葉を選んで話しているのに、なぜか嫌われる人が持っている"残念なマインド"
「ちょっと話したいことがあるんだけど」と言ってはいけない…本当に聞いてほしい時に使いたい"最初の一言"
「ので」「けど」を多用すると話がややこしくなる…話の上手い人が頻繁に使っている"話し始めの言葉"
「妻の話を聞いていると必ずキレられる」という夫が根本的に勘違いしている"妻の本当の望み"
「それって感想ですよね」は理屈がおかしい…「屁理屈で論破してくる人」を一発で黙らせるシンプルな返し方