年収750万円と年収10億円が毎日一緒にいるようなもの
しかし、大谷と水原氏の間柄は、選手と通訳で始まったわけではない。日本ハムで長く付き合っていくうちに、信頼関係を構築。そして異国の地で戦う日本人選手にとって必要不可欠な専属通訳として、ともに海を渡る決断をした。
水原氏はMLBでも基本的には球団職員として雇用されており、エンゼルスやドジャースから給与が支払われていた。ただ、大谷のグラウンドでの通訳だけではなく、車の運転手やプライベートでの通訳など、生活全般のサポートも担っていたため、大谷個人のポケットマネーによる雇用契約も結んでいたとされる。
球団職員のみでは一般的なサラリーマンの給与と変わらないが、大谷からの報酬も合わせれば、米スポーツ専門局ESPNが報じた30万~50万ドル(約4500万~7500万円)という破格の年収にも合点がいく。
ただ、メジャーリーガーたちの平均年俸は、AP通信によれば、2023年シーズンは過去最高の452万5719ドル(約6億8000万円)。ましてや、自分の隣にいる大谷は、ドジャースと北米プロスポーツ史上最高額といわれる10年総額7億ドル(約1050億円)という契約を交わしている。桁を1つ減らして、年収750万円の会社員が年収10億円のお金持ちと常日頃行動を共にしていると想像すれば、その格差は凄まじい。
「ライフスタイルに合わせようと無理をしていた」
移籍の際には、背番号17を譲ってくれたジョー・ケリー投手の家族に高級車のポルシェをプレゼント。昨年には、日本全国の小学校にグラブ6万個を寄贈するなど、桁違いのスケールを前に、金銭感覚が狂うのも無理はないだろう。
水原氏はESPNのインタビューに「生活苦だった。(大谷の)ライフスタイルに合わせようと無理をしていたからだ」と回答したという。それが「ギャンブル依存症」に拍車をかけ、雇用主でもある大谷の口座から違法ブックメーカー(賭け屋)へ、多額の借金返済のために少なくとも450万ドル(約6億7500万円)を送金する最悪の結果を招いてしまった。
大谷の危機管理が甘いと言われればそれまでだろう。ただ、異国の地で流暢に英語を使いこなす水原氏を見て、その信頼はさらに深くなっていってもおかしくはない。水原氏はメディアの取材やスポンサーの窓口業務も担っていたとされる。マネージャーとしての働きを見せる中で、銀行口座に関するあらゆる情報の管理も任せたのだとすれば、今回の「窃盗疑惑」も説明がつく。